いつでも元気

2020年9月30日

終活講座 Lesson5 
相続の「遺留分」とは

 相続人には、最低限保障されている相続財産の割合があります。これを「遺留分」といいます。遺留分はのように割合が決まっているため、相続人によって異なります。

法定相続分とは 民法で定められた各相続人が相続できる遺産の割合で、遺言書に相続割合の指定がある場合はその内容が優先する
遺留分とは 各相続人に保障されている最低限の遺産の割合のことで、遺言書で相続分がなかったとしても保障される

◆遺留分の主張は本人次第

 遺留分は例えば「長男に全財産を相続させる」との遺言書がある場合、相続人の長女が遺産をもらいたいと思った時に主張できる権利です。主張するか否かは本人次第です。
 遺留分の主張(請求)をすることで、人間関係が壊れる可能性があります。今後の関係性も考えたうえで行動を起こすことが大切です。
 もし、遺留分を主張する場合は、遺産を多くもらう相手に対し「遺留分侵害額請求」を行い金銭の返還請求をします。請求は意思表示のみでも構いませんが、実務では配達証明付きの内容証明を相手に送付します。
 なお、法改正により、遺留分の主張をされた人は金銭で払わなければならなくなりました。一括で払えない場合は分割か、家庭裁判所に猶予の許可をもらわなければなりません。不動産での支払いも可能ですが、多額の税金が両者にかかります。

◆遺留分の時効

 遺留分侵害額の請求を行う権利は時効があります。遺留分権利者が遺留分を侵害されていることを知った時から1年、または、相続開始の時から10年で時効により消滅します。
 例えば遺産分割をしないまま父の1周忌法要を迎えたとします。その時に「全財産を長男に」という遺言書があり、自分は遺産をもらえないと長女が知ったとしましょう。もし長女が遺留分侵害額を請求するなら、遺言内容を知った時から1年以内に請求しなければなりません。
 また、例えば音信不通だった長女が相続が始まって11年目に遺言書を知ったとしても、10年を経過しているため遺留分侵害額の請求はできません。
 なお、遺留分は兄弟姉妹にはありません。「全財産を妻に」という遺言書があった時は兄弟姉妹は遺留分の主張をできず、妻は全財産を相続できます。


明石 久美(あかし・ひさみ)
明石シニアコンサルティング
明石行政書士事務所代表
相続・終活コンサルタント、行政書士
ファイナンシャルプランナー(CFP)
千葉県松戸市在住
著書に『死ぬ前にやっておきたい手続きのすべて』(水王舎)『配偶者が亡くなったときにやるべきこと』(PHP研究所)など
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いつでも元気 2020.10 No.347

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