民医連新聞

2020年10月6日

外国人医療相談会に42人困難抱える人に届く活動を 群馬

 コロナ禍で大変な思いをしている外国人に支援を―。群馬中央医療生協は、感染対策を徹底し外国人医療相談会を行いました。阿部裕美さん(事務)の報告です。

 8月30日、群馬・前橋協立病院の敷地内で外国人医療相談会を開催しました。主催はNPO法人北関東医療相談会(AMIGOS)という外国人支援団体。健康不安を抱えていても医療にかかることが難しい外国籍の人の健康診断や、弁護士による法律相談、食料支援を、ひとつの会場で無料で受けられる相談会として、北関東の各地域で定期的に行っています。

■「今だからこそ」開催へ

 6月初旬、当法人はAMIGOSの長澤正隆事務局長と懇談。日本で暮らしながら在留資格がないため働くことも許されず、医療保険の資格もない、厳しい生活状況にある外国籍の人を、25年余り支援してきた活動内容や、入国管理局で現在も続く過酷な収容実態を聞きました。コロナ禍で半年間、医療相談会を開催できておらず、見通しも立たない現状を聞き、当院の岩森秀樹院長は「大変な思いをしている人が増えた今だからこそ、外国人医療相談会を実施する意義がある」と決意。当法人とAMIGOSで実行委員会をつくり準備をすすめました。
 「知ることから始めよう」と、長澤さんを講師に法人内で2度の学習会を開き、100人超の職員が参加。「全く知らなかった」「衝撃的過ぎる現実で自分に何ができるのか」「この事実をもっと発信していきたい」と、戸惑いながらも「何かしなくては」という思いが多く聞かれました。
 準備期間中も感染は拡大する一方で、実行委員からも開催への不安の声があがりました。そのたびに「今だからこそ」という岩森院長の決意を思い出し、「どうしたら開催できるか」を考えました。
 これまでの医療相談会は、開催案内チラシやSNSで情報を発信し、来場した全ての人を受け入れる形式でした。しかし、県をまたぐ移動での感染が懸念され、今回は県内在住者、事前予約40人に限定。各健診や診察は病院とは別の建物や特設会場で対応。スタッフも健診者も全員マスク・フェイスシールドを着用し、手指消毒など万全の感染対策をしました。
 当日は、AMIGOS関係者32人と職員62人が結集しました。健診者は42人で、イラン、ネパール、スリランカ、フィリピン、ベトナム、ミャンマーなど国籍はさまざまでした。初めて小児科健診と歯科検診も実施。医師に診てもらうのは初めての子どもや、抜歯したままの口腔内の人、自国で婦人科疾患を指摘されながら「どこの病院に行けばいいかわからなかった」という女性など、困難を抱えた人が多くいました。

■県独自の制度廃止で困難加速

 これまで群馬県では、国に先駆けて人権といのちを守る、外国人未払い医療費対策事業がありました。仮放免者が受診した時に医療機関の申請で治療費の7割を補てんする制度でしたが、今年度限りで廃止されます。その影響で、門前払いや100%どころか200%の本人負担を請求する医療機関もあるようです。制度を復活しなければ、ますます受診が難しくなり、重症化し、助かるいのちを救えない負の連鎖となります。
 そこで、今回の健診者42人中8人が医療機関への受診の必要性があったことや、25人(成人16人、乳幼児・幼児9人)に医療保険資格がなかった事実を記し、制度の再予算化を求める要望を山本一太県知事に提出。県の担当課長、係長と30分間懇談。廃止が決まった制度の復活は容易ではない様子でしたが、「今後も何かあれば互いに相談していきましょう」と新たなつながりをつくれました。

■外国籍は全国で7万人超

 最後にひとつ、報告しておきたい事例があります。健診当日、大阪在住の20代男性が健診会場に来ました。技能実習生として日本にきた彼はドロップアウトし、オーバーステイに。コロナ禍で帰国もできず、外国人コミュニティーで居候先は決まったものの、十分な労働は許されません。体調不良でも保険証もお金もなく、言語の壁もあり受診できませんでした。数万円の手持ちで、通訳ボランティアを頼り、大阪から群馬まで来たのです。医師、看護師、SWの判断で医療受診に切り替え、必要な検査、処方をしました。
 非正規滞在者となり過酷な生活を余儀なくされている外国籍の人は全国で7万人超。当法人はAMIGOSとつながり、セーフティーネットの一翼を担う活動をし、職員が意識するきっかけになりました。活動の継続はもちろん、全国の民医連事業所が地域で暮らす多種多様な人へアンテナを向け、“救いの手”を見えるように差し出す医療活動を、ともに行っていければと考えます。

(民医連新聞 第1723号 2020年10月5日)

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ