民医連新聞

2020年10月6日

安倍なき安倍政治ストップ いのち守る政治への転換を 一橋大学名誉教授 渡辺治さん講演

 9月18日の全日本民医連定例理事会で、一橋大学名誉教授の渡辺治さんが「安倍なき安倍政治を許さない」と題して講演しました。概要を紹介します。(丸山聡子記者)

 安倍元首相が辞任しました。安倍改憲に反対する共闘がもくろみを破綻させたこと、新自由主義政治の結果、コロナへの対処について無力だったこと―が要因です。
 「改憲」は自民党政権の宿願です。「安倍なき安倍政治・安倍改憲」を許さない運動が必要です。

■なぜコロナ対策で失敗したか

 「憲法改正」を掲げた安倍政権は、2016年の参議院選挙で勝利し、衆参両院で改憲に必要な3分の2の議席を獲得しました。翌17年の憲法記念日には改憲4項目を発表しました。この流れを止めたのが市民と野党の運動、「安倍9条改憲NO! 3000万署名」の広がりです。憲法審査会は停滞し、19年の参院選では改憲勢力が3分の2を割りました。
 今年に入り、新型コロナウイルス感染拡大を止めるため緊急事態宣言を実施。これを機に憲法に緊急事態条項を書き込み、改憲への道筋をつけようとしましたが、経済界の反発を招きました。布マスク配布などの対策に国民の批判があい次ぎ、辞任に至りました。
 コロナ禍の要因に新自由主義をあげる論調が盛んです。立憲民主党の枝野幸男代表は、新自由主義的傾向が「格差と貧困の拡大や社会の分断を生み出すとともに、少子高齢社会における社会不安をさらに強めた」と指摘しています。
 新自由主義政治の3つの柱は、「労働者の賃金削減」「大企業の減税と社会保障費などの削減」「大企業に対する規制の撤廃」であり、これらをすすめるための「官邸主導」の政治体制です。
 医療分野での安倍政権の新自由主義改革は「地域医療構想」です。18年には国保の都道府県化で国保支出の削減をはかりました。「地域医療構想」での病床削減に着手し、15万6000床を削減する計画でしたがすすまず、424の公立・公的病院の再編・統合リストの公表に踏み切りました。
 全国の感染症指定病院367病院のうち346病院(94%)は公立・公的病院です。1998年の感染症法で感染症病床削減が決まり、全国410病院に9060床あった感染症病床は2019年には1785床に激減。そこに、新型コロナが襲いかかりました。
 保健所は1994年の847カ所から2020年の469カ所まで削減(図1)。公務員を減らし自治体は公衆衛生と災害対策を縮小。コロナ禍で保健所はパンクし、PCR検査の数は増えませんでした。
 労働分野では、非正規化がすすみ雇い止めが横行。失業給付や生活保護は極度に縮小されました。その結果、コロナ禍で女性や非正規労働者を中心に大量の休業が発生、休業手当不払いも多発しています。コロナ禍で給付や特例措置ができましたが、9月末終了も多く、年末にかけて大量の解雇・失業が危惧されています(図2)。

■ポスト安倍政権のゆくえ

 ポスト安倍政権である菅政権は、新自由主義政治を見直す気配はありません。骨太方針2020では、新型コロナウイルス感染拡大を受け、公立・公的病院の再編・統合こそ明記しませんでしたが、コロナ禍の教訓を「デジタル化の遅れ」としています。全世代型社会保障第2次中間報告では、コロナ禍での特例措置はあくまで時限措置であり、予定通り、75歳以上の高齢者窓口負担の2割化などをすすめるとしています。
 改憲もあきらめてはいません。安倍元首相は、辞任を決めた後に敵基地攻撃力保持を決定するとし、菅政権では安倍元首相の実弟の岸信夫氏が防衛大臣になりました。安倍首相退陣で市民と野党の運動が警戒心を緩めることを期待し、利用しようとしています。

■安倍政治に代わる選択肢を

 憲法、いのちを守るためには、「安倍政治」に代わる政権の実現が必要です。市民と野党の共闘は6年間で深く広がりました。「桜を見る会」疑惑では野党が連携して追及。コロナ対策では共同して支援策を提案し、実現しました。この共闘を一歩すすめ、政権をめざす運動にすることが大事です。
 昨年5月、市民連合と5野党・会派は、改憲反対や防衛予算を国民の暮らしにふり向けること、辺野古新基地建設中止、保育・教育・雇用の予算を増やし、社会保障を充実させる、など13項目の共通政策を確認しました。
 ひきつづき改憲NOの署名を集め、安倍政権の置き土産の「敵基地攻撃能力保持」を阻止する運動にとりくみましょう。総選挙に向け、どんな日本、地域をつくるのか、大いに議論してください。

(民医連新聞 第1723号 2020年10月5日)

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