民医連新聞

2003年8月4日

高齢者医療を総合医学としてとらえよう 初の老年医学セミナー

 七月五日、保健医療研究所と全日本民医連は「第一回老年医学セミナー」を開き、約一三〇人が参加しました。

 企画した医療福祉・経営部の水戸部秀利部長は、「いまなぜ老年医学か?」としてセミナーの趣旨を説明。「少子高 齢化社会の中で高齢者医療の需要が増えているが、臓器別に診る従来の医療では限界があること。民医連でも高齢者施設が増加していること。現場には廃用性障 害、痴呆のほかに、社会・家庭・介護の問題が複雑に絡み、悩みも多い。QOLや終末期医療の考え方を深める必要がある。いまヒューマニズムにたって科学的 根拠にもとづく総合医学としてとらえ直すことが必要。そのためにはもっと学ぶ必要がある」と、のべました。

 講演は「高齢者の総合機能評価(日本老年医学会理事/健康科学大学長・折茂肇医師)」と「痴呆高齢者への対応と 介護(国立療養所中部病院内科医長・遠藤英俊医師)」の二つでした。その後、北海道民医連の「高齢者医学・医療研究会」と九州沖縄地協の「高齢者医療を担 う医師の会」のとりくみが報告され、質疑が交わされました。

講演 痴呆高齢者への対応と介護

 遠藤英俊講師は愛知県の同院で行っている痴呆性高齢者に対する医療の実践を織り交ぜて講演。

 痴呆高齢者についての基礎知識として、その特徴、痴呆診断と治療の重要性、内科的疾患・外科的疾患から生じる痴 呆の鑑別、アルツハイマー症候群などについて概説。また介護施設での痴呆の診断と専門的な介護の重要性を強調し、グループホームの開設者向けに「痴呆介護 指導者・実務者」の養成が行われていることなどを紹介しました。また痴呆性高齢者用のクリニカルパスを使用した経験では、家族に喜ばれ、インフォームドコ ンセントに役立て、在院日数が短縮するなどの効果が検証されたことをデータで示しました。さらに痴呆看護のポイントや治療薬、非薬物治療についても詳しく のべました。

 非薬物療法のなかで、トピックとして紹介したものが「回想法」です。同院では、衛星放送の三〇分番組を見せるテ レビ回想法、愛知県師勝町の回想法センター(注)と連係したとりくみを行い、「回想法」が痴呆性高齢者の回復に効果があることのエビデンスを確認しました (図)。イギリスでは各地に博物館を利用した回想法センターがあること、ボランテイアが活躍していることなども紹介しました。

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注)「回想法」…昔なつかしい生活用具などに見たり、触れたりして、かつての体験を思い出し、語り合ったりする中、精神を活性化させる療 法。自尊感情の高まりや対人関係生活の活性化、表情や感情を豊かにしQOLを高める。この愛知県の「回想法センター」では、昭和の生活史の博物館・歴史民 俗資料館と文化財の旧地主邸を活用し、高齢者を対象にした回想法を実践中。「回想法スクール」やボランティアの育成、研修なども行う。
HP:www.town.shikatsu.aichi.jp./~center08/kaisou

(民医連新聞 第1313号 2003年8月4日)

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