医療・看護

2020年10月20日

相談室日誌 連載486 経済的虐待受けるAさん 家族を頼れない人の支援は(岩手)

 Aさん(80代女性 要支援1)は生活保護を利用し、週1回のデイサービスを利用しながらアパートでひとり暮らしをしていましたが、脳梗塞を発症し、左上下肢麻痺、移動は車いすの状態で当院回復期リハビリテーション病棟へ転院してきました。
 Aさんは家族から経済的虐待を受け、世帯分離されていたため、家族の協力を得ることはできませんでした。前医で身元保証人になっていた県外の友人からは、経済的支援や医療同意はできないと話があったため、「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」を用いて、病棟内で対応を検討しました。急変時や死亡時は病院から生活保護担当者へ連絡すること、友人には身元保証人として求めないことなどの方針を決め、生活保護担当者や地域包括支援センターの担当者と協力しながら支援をすすめました。
 Aさんは「自宅に戻って生活を再開したい」という意向を持ち、リハビリにも意欲的で、室内では歩行器歩行ができるまで回復しました。幸いAさんは回復しましたが、ひとり暮らしが難しい場合には身元保証人がいないと施設などへの入所は厳しいだろうという考えも頭をよぎりました。
 自宅退院の準備をすすめる中で、Aさん宅には家電がそろっていないことが発覚。床からの立ち上がりが難しい状態での退院だったため、冷蔵庫、洗濯機、テーブル、いすの購入を病院スタッフが支援し、それらを搬入した状態で退院となりました。
 家族に頼れないAさんの支援をする中で、入院契約、医療同意、退院後の生活の検討、退院の準備、死後の対応など、家族による対応が多岐にわたることを感じました。「地域包括ケアシステムの深化・推進に向けた制度やサービスについての調査研究報告書」では、20年後の2040年には多様化する家族のありようと住まい方から、今までのような家族介護を期待しない・できない時代になると言われています。家族に頼ることができない人が多くなると予測される中で、社会から疎外され孤立する人たちが適切な医療やケアを受けられるよう、まずは私たちが、対応を検討していかなければいけないと感じています。

(民医連新聞 第1724号 2020年10月19日)

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ