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2020年11月30日

こんなサービス待っていた

文・写真 新井健治(編集部)

 庭の草刈りや電球交換などちょっとした困りごとを解決するNPO法人を山梨の健康友の会と山梨民医連が立ち上げた。
 法人名は公募で決まった「ゆいまる」。
 人と人をつなぐ“結い”の取り組みが「こんなサービスを待っていた」と地域から歓迎されている。

 取材した10月上旬、庭の草刈りを依頼してきたお宅に60歳以上の男性4人が集まった。370坪(約1200平方メートル)と広い敷地には、柿の木や松がうっそうと茂り足下は草ぼうぼう。草刈りを頼んだのは元農家の小松たか江さん(83歳)。「夫は亡くなり、頼りにしていた知人も体調を崩して手入れができなくなった。夏場は胸まで雑草で埋もれてしまう」と言う。
 草刈りに駆けつけたのは「ゆいまる」の協力会員。エンジン式草刈り機を使い手際良く雑草を刈り取る。元病院労組職員の小俣登二さん(69歳)は「困っている人が予想以上に喜んでくれるので、やりがいがあります」と話す。
 甲府健康友の会会員の小松さんは「友の会新聞を見て電話をしたら、すぐに来てくれた。本当に助かります」と安堵の笑みを見せた。

友の会を豊かに

 「友の会の高齢化が進み、『生活する上で、一人ではできないことが増えて困っている』との声を聞くようになりました。介護保険制度では対応できない生活の課題を解決する方法を模索してきました」と話すのは、甲府健康友の会事務局次長の川俣越治さん。
 共同組織活動交流集会で全国の教訓を学び、友の会を豊かにするには居場所づくりと助け合い事業の2つが必要と分かり、まず2015年に居場所「くつろぎ処よってけし『ともだち』」を甲府駅近くに開設。助け合い事業は山梨の健康友の会と山梨民医連が協議を重ね、2年前に石川のNPO法人「たすけ愛」などを見学して準備を進めてきた。
 助け合い事業を担うゆいまるを立ち上げたのは今年5月。理事長は現役時代に薬局法人の専務などを経験した木内和芳さん(66歳)。法人設立に向け経理と財務にも詳しい人ということで適任だった。
 「ひとり暮らしの高齢者からの依頼が多い。粗大ゴミを捨ててほしい、パソコンのメールが開けないなど、ほんの些細なことだが自分ではできない、近所に頼む人がいないというケースが目立つ。地域の高齢化が進み、需要が高まっています」と実感する。

本当は何に困っている?

 一般的な生活支援事業と違い、民医連と連携した体制も大きな特徴。ゆいまるコーディネーターの都築紀子さんは、山梨勤医協の職員でケアマネジャーの経験もある。「依頼者のご自宅を訪問すると、その人が本当は何に困っているのか、見えてくることがあります」と都築さん。
 ゆいまるのサービスを1回提供しただけでは、生活を立て直すうえで根本的な解決にはならないことも。そういう時は介護保険につなげたり、生活保護の申請を支援することもある。
 ある日、妻を失い生きる意欲をなくしていた60代の男性がゆいまるに電話をしてきた。病気もあって寝たきりの状態だったが、通院と買い物を援助するなかで元気を取り戻した。ゆいまるは生活を立て直すとともに、生きる希望も運んでいる。

「これを見るだけで安心」

 木内理事長は取材当日、蛍光灯がちかちか点滅するお宅を訪問。蛍光灯本体ではなく、点灯管が規格に合っていないことが分かり、無事に修理を済ませた。
 依頼した保坂勢津子さん(78歳)は「自分で新しい蛍光灯を買ってきて交換したが直らなかった。電化製品のことは年寄りには分からない。テレビのリモコンもきかなくなったので、見てもらおうかな」と話す。
 木内理事長は「ゆいまるのチラシをテーブルに置き、『これを見るだけで安心』という人もいます。今後は事業を黒字化すること、利用料が払えないという人にどのように対応するかが課題」と言う。
 現在も買い物代行や受診同行などのサービスを展開しているが、来年2月から送迎サービス(福祉有償運送)にも本格的に乗り出す予定。共同組織が掲げる「安心して住み続けられるまちづくり」へ。ゆいまるの挑戦が続く。


事業概要

NPO法人 ゆいまる

対象エリア
今のところ甲府市中心

協力会員(サービス提供)
15人(女性10人、男性5人)

利用会員
現在は友の会会員向けだが、会員以外の依頼も多く柔軟に対応

利用料
30分600円(交通費を含む)
※ただし、世帯収入など相談に応じる

協力会員時給
1時間850円

主な依頼
草刈り、植木の剪定、電球交換
台所の掃除、雨樋の掃除、買い物代行
銭湯の同行、受診同行、薬のお届け
網戸の張り替え、粗大ゴミ廃棄
家具の移動、入院中の猫の餌あげ

いつでも元気 2020.12 No.349

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