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2020年12月8日

介護の未来をひらく 特養あずみの里裁判をたたかって 連載(2) 誇り持ち働ける専門職へ 全国の連帯で次なる前進を 岩手・在宅総合センターひだまり吉田真吾さん(介護福祉士)

 全国の仲間の奮闘で「無罪」を勝ち取った特養あずみの里裁判。そのたたかいや教訓をふり返る、連載第2回は、岩手の仲間・吉田真吾さんです。

 まず、全国の介護職、介護事業所の思いを背負いたたかった山口けさえさん、特養あずみの里の職員ほか関係者のみなさんに御礼申し上げます。判決期日の延期や、上告期限を、私も全国のみなさんと同様、緊迫した心情で過ごしました。無罪判決という結果に、岩手民医連では拍手と歓声が沸き起こりました。「やっと祈りが届いた…」と、判決を聞いた瞬間は感動で胸をなでおろしました。組合員にも報告し喜びを分かち合い、「感動して涙がでた」という介護職員からの報告もありました。
 私がこの裁判支援に強く連帯できたのは、裁判傍聴や支援者集会に参加し、地協での報告や介護職部会責任者会議などで全国の仲間とつながり、「自分にも何かできることはないか」と考え始めたからです。「民医連新聞」でも長野の仲間の街頭宣伝の様子を見て、突き動かされました。
 この経験を一人でも多くの人に伝えること、一筆でも多くの署名を集めることは、私の使命と感じました。職員が「自分が同じ状況に立ったら」と、当事者意識を感じられる伝え方で、裁判の近況を部会ニュースにして定期的に発信。近隣の介護事業所へは説明文と署名用紙を送付しました。返信用封筒にたくさんの署名を入れ、重量オーバー分の切手を追加してまで返送してくれた事業所もありました。「無罪判決、本当に良かった」と多数の温かいメールも届き、この裁判が介護へ与えた反響の大きさを肌で感じました。
 無罪が確定した今も、介護現場の萎縮は拭い切れていません。常に高齢者のリスクと隣り合わせの現場で、脆弱(ぜいじゃく)な制度のもと、介護事業所は悲鳴を上げています。そんななか「利用者にもっと寄り添いたい。いい介護がしたい」と働く職員がほとんどです。
 「介護」という専門職を、もっと夢や誇りを持って働き続けられる職種にするために、尽力していかなければなりません。この裁判で、署名一筆の重さと成果、あきらめない心の大切さが示されました。同時に、全国の民医連の連帯も強まりました。今度は「介護ウエーブ」へ思いを乗せ、ともに光が見えるまで、「医療・介護活動の2つの柱」の深化を、トップギアで前進させていきましょう。


特養あずみの里裁判
 2013年、おやつのドーナツを食べた入所者が急変し、のち死亡。その場にいた看護職員個人が業務上過失致死罪で起訴された、えん罪裁判。無罪を求める署名のべ73万筆余りが集まり、20年7月に東京高裁で逆転無罪。

(民医連新聞 第1727号 2020年12月7日・21日合併号)

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