声明・見解

2006年5月15日

【声明2006.05.15】原爆症認定集団訴訟大阪地裁判決についての声明

2006年5月15日
  全日本民医連原爆症認定訴訟支援医師団
全日本民医連被ばく問題委員会

 5月12日、大阪地裁は、遠距離・入市被爆者4人を含む9人の原告全員の原爆症認定申請棄却処分の取り消しを国に命じた画期的な判決を言い渡しました。

 この判決は、現行の認定基準の機械的な適用を完全に否定し、数々の医学文献や科学者の証言、医師意見書のエッセンスを余すことなく取り入れたものであり、被爆者医療に関わる医師・医療従事者として心から歓迎するものです。

 またこの判決は、これまでの原爆訴訟の勝訴判決と比べて、以下のような際立った特徴があります。

  1. 現行の審査の方針は遠距離被ばく・入市被ばくの過小評価であるとし、残留放射線による低線量被ばく・内部被ばくの影響を明確に認めた判決であること、
  2. 審査の方針の根幹となっている初期放射線に依拠した原因確率(寄与リスク)は、疫学的な一つ の考慮要素に過ぎず、これを個人の起因性判断に機械的に適用することは誤りであるとし、原因確率が小さいからといって直ちに放射線起因性を否定されるべき ではないことを明確に示したこと、
  3. 被爆者の急性症状の評価では、当時の衛生状態やストレスに起因するという長崎松谷訴訟以来の国の主張を完全に否定したこと、
  4. 申請疾病の放射線起因性判断においては、被爆前の生活状況、健康状態、被爆状況、被爆後の行 動経過、活動内容、生活環境、被爆直後に発生した急性症状、さらには被爆後の生活状況、健康状態、疾病の発症経過、病態、申請疾病以外に発生した疾病の内 容等々に注目して総合的に勘案して判断すべきとしていること、などです。

 今回の判決のもう一つの特徴は、申請疾病を理解するにあたって、申請書に記載された疾病の名称に限定され るのではなく、申請書や医師の意見書その他の添付書類の記載内容に示された疾病をも詳細に解析し、被爆者に対する原爆放射線の影響を全体として理解しよう としていることです。

 さらに今回の判決は、被爆後長く被爆者を苦しめた体調不良を重視し、循環器疾患(心疾患、脳卒中)、遅発性白内障、甲状腺機能低下症等の非がん疾患の認定にも大きく道を開くものとなった判決です。

 しかし今回の判決で原爆症認定基準の見直しが確定したわけではありません。

私たちは、被爆者のみなさんとともにこの勝訴の喜びを力にして、全国各地で国が控訴しないように要請する運動を直ちに強めることが重要です。

 全日本民医連原爆症認定訴訟支援医師団および被ばく問題委員会は、引き続き全国各地裁での裁判を支援し、認定行政の改善による被爆者の全面的救済を求め奮闘していく決意です。

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ