いつでも元気

2021年2月26日

終活講座 
遺言書がないと困るケース(1)

兄弟姉妹が相続人

 例えば亡くなった人(被相続人)に子どもや両親、祖父母がいない場合、相続人は配偶者と被相続人の兄弟姉妹になります。
 昨年11月号でも触れましたが、このケースでは遺言書がないと配偶者が大変な思いをすることが多く、相続人同士でもめることさえあります。相続人を妻と故夫の兄、妹の3人のケースでみてみましょう。

遺言書がない場合

 遺言書がない場合、遺産の分け方を記載した「遺産分割協議書」の作成が必要です。相続人全員の署名や印鑑登録証明書が必要になるため、妻は兄と妹の協力なしでは進めることができません。
 遺産の分け方に関しては、法定相続分として図のように妻が4分の3、兄と妹は8分の1と定められています。法定相続分はあくまで法律上の話で、遺言書がなければ分割方法は相続人の間で自由に決められます。私が相談を受けたなかには、兄弟姉妹が遺産のほとんどを相続し妻の取り分がなくなってしまうケースもありました。

遺言書があれば

 こうしたケースでは、例えば「全財産を妻に」といった遺言書があれば、兄と妹は権利を主張できません。兄弟姉妹には、最低限の遺産を相続できる権利(遺留分)がないからです。つまりは妻が全財産を相続できるのです。
 ただし相続人を確定するには、故夫のみならず故夫の両親それぞれの出生から死亡までの全ての戸籍謄本と、兄弟姉妹の戸籍謄本などが必要です。出生から死亡まで全ての戸籍謄本となると複数にわたり、その都度、本籍地の市町村に請求しなければなりません。こうした書類を配偶者が取得するには、多大な労力がかかります。
 被相続人の兄弟姉妹が相続人の場合、自分で書く自筆証書遺言より、専門家を遺言執行者にした公正証書遺言の方が、書類取得も手続きもスムーズに進むため配偶者の負担を減らせます。


明石 久美(あかし・ひさみ)
明石シニアコンサルティング
明石行政書士事務所代表
相続・終活コンサルタント、行政書士
ファイナンシャルプランナー(CFP)
千葉県松戸市在住
著書に『死ぬ前にやっておきたい手続きのすべて』(水王舎)『配偶者が亡くなったときにやるべきこと』(PHP研究所)など
■相続・終活・老い支度相談所
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いつでも元気 2021.3 No.352

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