いつでも元気
2021年2月26日
まちのチカラ
伊豆の踊り子と河津桜の里
文・写真 橋爪明日香(フォトライター)
伊豆半島の南東に位置し、名作『伊豆の踊子』の舞台となった河津町。
天城山系の豊かな森林を源とする河津川が相模灘にそそぎ、早咲きで有名な河津桜が咲き誇るあたたかい町を訪ねました。
※感染対策をしたうえで取材しています
都心から特急「踊り子」号で約2時間半。河津駅を降りて5分も歩けば河津桜の名所に到着。河津川沿いに桜並木の見事な景観が約4km続きます。河津桜は2月上旬から開花しはじめる早咲きの桜で、およそ1カ月と長期にわたり咲きます。花弁が大きく、色は白から濃いピンク色にグラデーションがかかり、人々を魅了します。
「町内には約8000本の河津桜がありますから、町民の数より多いんですよ」と、町内を案内してくれたのはかわづふるさと案内人の糸山真由さん。カワヅザクラ(河津桜)はオオシマザクラ系とカンヒザクラ系の自然交配種と推定され、樹齢約65年の原木が町道大堰笹原線沿いの個人宅にあります。偶然発見した町民が苗を庭に植え、1カ月も咲き続けたことから近隣の注目を集めました。
以来、先人たちの努力により増殖・普及に成功。今では河津桜まつりが町のメーンイベントとなり、多い時で来場者が100万人を超えます。ただし今年は新型コロナの影響で初の開催中止が決定。詳細はホームページでご確認ください。
吉永小百合も来た温泉郷
河津町といえば、川端康成の名作『伊豆の踊子』の舞台になったことで知られます。天城山中に湧き出る河津温泉郷、湯ヶ野温泉に静かに佇む「福田家」は、1879年(明治12年)創業。川端康成が19歳の時にひとり旅で訪れ、その時の実体験をもとに執筆しました。この名作は6回映画化され、美空ひばり、吉永小百合、山口百恵ら昭和の大スターが、撮影のために滞在しました。
「吉永小百合さんが撮影に来られた時は伊豆中がわき、皆さんサインを求めて色紙やノートの切れ端まで持ってきました。それを届けると、全部ご自身でサインされ、素晴らしいと思いました」と、女将の稲穂照子さんが当時の思い出を語ってくれました。
踊子が裸で手を振る有名なシーンに出てくる秘湯の湯は、加水も加温もしていない源泉掛け流し。館内には貴重な文学資料などが展示され、宿の隣には川端康成が生前に認めた文学碑があります。ノーベル賞作家も聞いた河津川のせせらぎに耳を傾けながら、『伊豆の踊子』の世界に浸ってみるのもいいでしょう。
爬虫類の動物園
伊豆半島の数ある観光スポットの中で、ファミリー層やコアなファンに人気の体感型動物園iZoo。ヘビやトカゲ、ワニなどを間近で見たり触ったりすることができる国内最大級の爬虫類飼育施設です。
館内に入って驚くのは、展示コーナーの通路にカメが放し飼いされていること。水族館のようにさまざまな水槽を覗きながら見学する足元には、のっそのっそとマイペースで歩くリクガメがなんと30?40頭も。
ほかにもどう猛な毒ヘビ、巨大タランチュラ、美しいイグアナなど普段見ることのない珍しい生体がズラリ。体重30kg以下のお子様はアルダブラゾウガメの背中に乗って記念撮影ができます。「みんな愛嬌があり、目がクリクリしていて可愛いですよ。ぜひ触ってみてください」と飼育員の平山結斗さん。ライオンもキリンもいませんが、強烈なインパクトを残す思い出ができるでしょう。
最高のリフレッシュパラグライダー
鳥のように空を飛んでみたいと思ったことはありませんか? そんな夢をかなえてくれるのは、大池高原に拠点を構える今井浜フライングスクール。軽い布と糸でできたパラシュートを開き、斜面を利用して滑空するパラグライダーが楽しめます。年齢や性別、体格、経験を問わず、幼稚園児から走ることができれば80歳代までチャレンジできます。
まずは斜面を走って浮く練習から。初めて地面からふんわりと身体が浮く感覚は、忘れられない感動体験。半日練習したあとは、インストラクターと二人乗りのタンデムフライトで大空に飛び出します。上昇気流に乗って、上へ上へとゆっくり円を描くように空中散歩。海の向こうには伊豆七島が一望でき、眼下にはジオラマのように森や街が広がります。
「パラグライダーは心が大きく動くスポーツです。大自然の中で人間の存在は小さく、おおらかな価値観に変わるかもしれませんよ」と、校長の西野力也さん。趣味として通う会員には、医療や福祉関係など人を相手にしている職業の人が多いとか。日常を離れて地球の息吹を感じる、最高のリフレッシュです。
柑橘類の豊かな味わい
町では年間を通しておいしい柑橘類が実ります。伊豆の温暖な気候を生かし、海に臨む段々畑でさまざまな品種を栽培しています。
「温州みかん、甘夏、ニューサマーオレンジなど伊豆のミカンは種類が多いことを知ってほしい」と発信するのは、常時約2000点の土産を取り揃える伊豆オレンヂセンターの山下千秋さん。おすすめは「一杯飲んだら3年長生き!」がうたい文句のウルトラ生ジュース。
創業当時、東京オリンピック(1964年)の体操競技で流行語となった「ウルトラC」から名付けました。地元農家が大切に育てた四季折々のミカンにその白い花から採れた蜂蜜を加え、コクのあるフレッシュな味わい。ビタミンCたっぷりの生ジュースは旅の疲れを癒やします。ぜひご賞味ください。
ほかにも、市場に出回っていない品種を含む約1万4000株のカーネーション見本園、バラの香りに包まれる河津バガテル公園など、河津町は花いっぱいのまち。一足早い春が訪れています。
■次回は埼玉県東秩父村です。
まちのデータ
人口
7029人(1月1日現在)
おすすめの特産品
わさび、ズガニ、あじ干物、柑橘類
絹さや豆、カーネーション
アクセス
東京から車で約3時間
電車で約2時間半
問い合わせ先
河津町観光協会 0558-32-0290
いつでも元気 2021.3 No.352
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