MIN-IRENトピックス

2021年3月16日

ビキニ被災は終わっていない 国は一刻も早い救済を 高知・労災訴訟

 核被害者の救済を求めるたたかいは、今も各地で続いています。高知県ではビキニ環礁の水爆実験で被ばくした被害者、遺族が労災認定を求める訴訟を続けています。(稲原真一記者)

 1954年3月1日、アメリカはマーシャル諸島ビキニ環礁で水爆実験を実施しました。水爆の威力は広島に投下された原爆の約1000倍とも言われ、爆発で生じた放射性降下物「死の灰」が大量、広範囲に降り注ぎました。マーシャル諸島の島民や、爆心地から160km以上離れて漁をしていた第五福竜丸などの多くの漁船乗組員も被ばく。しかし、当時の日米両政府の政治取り引きにより、実態の解明や被害者への補償はうやむやにされました。

■60年間隠された被害

 高知の漁船の被害は、地元の有志の聞き取り調査で判明しました。「被害の大きさに驚いた」と話すのは、室戸市で支援活動をしている濵田郁夫さん。マーシャル諸島にいた日本漁船はのべ1000隻。室戸船籍だけでも3000人近い被害者がいた可能性があります。被害者の遺族で労災訴訟の原告でもある増本美保さんは、「夫には国からの説明や調査もなく、本人も被害者だとは思っていなかった」と言います。
 日本政府は「被害に関する資料はない」としてきましたが、2014年にアメリカの文書から存在が発覚。被害者、遺族は16年、「被害を隠し救済を怠った」として、国に賠償を求める訴訟を起こしました。「被害を知った夫は、『被ばくし、死んでいった仲間の無念を、自分が死ぬ前に晴らしたい』と話していた」と増本さんは思い返します。高松高裁は国が隠蔽(いんぺい)した事実を認めず、19年に敗訴が確定。一方で、判決は第五福竜丸以外の漁船の被ばくを初めて認定し、立法府と行政府による救済の必要性も認めました。

■無責任な国と県

 現在は、労災認定を中心に運動をすすめていますが、昨年3月末の提訴後、いまだ管轄裁判所すら決まらず、東京での裁判も検討されています。しかし、弁護団代表の南拓人さんは、「立証は被害者本人の証言が重要であり、年齢や体調を考慮しても高知でやることが必須だ」と強調します。
 1月22日、原告、遺族らは、被害者の健康調査実施を求めて県に要請を実施。県は「調査は国の責任でやるもの」との回答のみ。「県民の健康に責任を負う行政の姿勢として疑問を覚える」と、増本さんは憤ります。今後は、被害者や遺族への病歴調査で被害の実態を明らかにする予定です。
 高知民医連は職員教育と位置づけ、3月7日の「ビキニデーin高知」に職員が参加。参加者からは「さまざまな思いが伝わった」と感想がありました。今後も支援や学習をすすめていく予定です。


核廃絶へ、すすめる年に

3・1ビキニデー開催

 3月1日、「3・1ビキニデー集会」がオンラインで開催されました。静岡原水爆被害者の会会長の大和忠雄さんが、「これまでにない団体、個人からの参加やメッセージが届き、平和活動の広がりを感じる。新署名をすすめ政府への圧力を強めよう」とあいさつ。市民団体や国連代表、被ばく地域の首長、野党などから賛同メッセージが寄せられました。
 第2部は文化企画のほか、各地の活動報告がありました。被爆ピアノ演奏のほか、マーシャル諸島の現状と島民の悲痛な叫び、怒りの声を集めた短編ドキュメンタリー映像も紹介。高知のビキニ労災訴訟への支援・連帯を求める発言や、とりくみも報告されました。
 前日に開催された日本原水協全国集会では、全国や海外の代表を招き、各地のとりくみや情勢を交流しました。
 分科会では核兵器禁止条約の53カ国目の批准国になったフィリピンの代表も発言しました。「フィリピンには市民運動でつくられた非核憲法がある。批准は憲法の実現であり、これが議会の3分の2の賛成を後押しした」と批准に至る経緯を報告しました。


署名のお願い

 ビキニ労災訴訟では「高知地裁で審理することを求める署名」にとりくんでいます。下記のURLからオンラインでも可能です。
https://kochigensuikyou.hiho.jp/bikini/

(民医連新聞 第1733号 2021年3月15日)

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ