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2021年3月31日
終活講座
遺言書がないと困るケース(2)
判断力がない相続人がいる
相続人の中に、認知症や知的障がい者など判断力がない人がいる場合、家族にとって困る事態が起こります。本稿では相続人を認知症の母親と長女、長男の3人のケースでみてみます。
遺言書がない場合
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、その結果を書面にします。しかし、母親は協議への参加も書面への署名も難しいため「成年後見人※」が必要です。後見人がつくことでどのような事態が起こるのかみてみましょう。
(1) 長女が後見人
母親に後見人がいない場合は、家庭裁判所に選んでもらいます。仮に長女が後見人になった場合、長女も母親も相続人のため「利害関係人」となり、長女は母親の代理人として遺産分割ができません。そのため、遺産分割などを担当する専門家(特別代理人)を別途、家庭裁判所に選んでもらわなければなりません。
専門家は母親の代理人として法定相続分を守る必要があるため、長女と長男は思うように遺産を分けられない可能性があります。また、その専門家への報酬も必要になります。
(2) 専門家が後見人
弁護士や司法書士など専門家が後見人として関与すると、先ほど述べたように長女と長男は自由に遺産分割ができません。
また母親が亡くなるまで、その専門家が後見人として財産管理や身上監護を継続します。その間も専門家への報酬が必要ですが、母親の財産が増えるため、報酬額も高くなる可能性があります。
遺言書がある場合
専門家が遺言執行者(遺言書通りに手続きする人)になる公正証書遺言の場合、その専門家が戸籍謄本などの取得や手続きを行うため、母親を関与させずに進めることが可能です。
しかし遺言執行者が相続人であったり、自筆証書遺言の場合は、母親の署名を求められる可能性があるため、相続手続きがスムーズに進まないことがあります。
判断力がない相続人がいる場合は、相続手続きが円滑に行われるよう準備が必要です。
※成年後見人
認知症や知的障がいなどで判断能力の不十分な人の財産管理や身上監護(生活・医療・介護に関する契約や手続きなど)の法律行為を行う人のこと
明石 久美(あかし・ひさみ)
明石シニアコンサルティング
明石行政書士事務所代表
相続・終活コンサルタント、行政書士
ファイナンシャルプランナー(CFP)
千葉県松戸市在住
著書に『死ぬ前にやっておきたい手続きのすべて』(水王舎)『配偶者が亡くなったときにやるべきこと』(PHP研究所)など
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いつでも元気 2021.4 No.353
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