いつでも元気

2021年4月30日

お金をかけない健康法

 コロナうつが話題になりだしたのは、昨年の夏頃だろうか。9月に厚労省が1万人以上を対象に調査すると、半数程度の人が何らかの不安を感じ、女性のほうにより多くその傾向が見られた。当クリニックの外来でも、自分から「コロナうつなのでは」と口にする方が続出した。
 高血圧と脂質異常症などで通院するAさん(70代女性)。夏頃「コロナうつかしら。気持ちが落ち着かないの」とおっしゃる。北海道の施設で暮らす母親に面会できずにやきもきしていた。PCR検査で陰性を確認して北海道へ。1週間滞在して帰られたあとは、少し落ち着いたようだ。
 Bさん(70代男性)は高血圧や不眠、前立腺肥大で通院。やはり夏頃「どうもだるくて、コロナうつかも。血圧も高めで気になるし、足がもつれる」と話す。スクワットや体操は続けていたが、秋からは完全消毒で再開したジムを利用。「最近は調子が良い」とのことで、ほっとしている。
 脂質異常症や膝関節症を抱えるCさん(50代女性)は「最近、動悸が気になる」と訴える。同居の母が通うデイサービス施設からコロナ陽性者が出たと連絡を受け、突然の動悸に襲われたという。感染の不安が体調に悪影響を与えたのだろう。
 喘息のDさん(70代女性)は毎朝、テレビでコロナの感染状況などをついつい見てしまっていた。「いつもならウキウキする春なのに、桜や菜の花を見ても、憂うつな暗い気分になる」。一人暮らしなので話し相手もおらず、お喋りができない。だんだん寝つきも悪くなり、いつもは見ない夢を見るようになった。
 初めて経験する自粛生活・外出制限の中、今まで経験したことのない感情に襲われる。倦怠感憂うつ動悸不眠…。受診時には堰を切ったように話され、またご自分なりの工夫も語られる。
 いつも通りの運動やジム通いの再開、リモートでも親戚や友人などとの会話を意識して楽しむことで、うつ気分も緩和してきている。一方で、感染のさらなる拡大や長期化による孤立は依然として心配だ。


大場敏明
おおば・としあき
1946年、新潟県生まれ。千葉大学医学部卒、内科医。船橋二和病院、東葛病院、みさと協立病院などを経て、クリニックふれあい早稲田(埼玉県三郷市)院長。著書に『ともに歩む認知症医療とケア』(現代書林)、『ドクター大場の未病対策Q&A』(幻冬舎)、『かかりつけ医による「もの忘れ外来」のすすめ』(現代書林)

いつでも元気 2021.5 No.354

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