声明・見解

2021年4月19日

【声明2021.04.16】国民の命と健康を守るため医薬品の安全と品質を確保、安定供給を実現する施策を求める

2021年4月16日

全日本民主医療機関連合会
会 長 増田 剛

 本年に入り、後発医薬品メーカー、小林化工株式会社(以下小林化工)に対して116日間の業務停止、日医工株式会社(以下日医工)の富山第1工場32日間の医薬品製造停止と行政処分があいついだ。
 小林化工では承認された製造法とは異なる工程で抗真菌剤の原料と取り違えて催眠導入剤を混入させた。さらに、製品検査で異常が見つかっていたにも関わらず出荷され、結果2人の死亡と運転中の事故を含め200人以上の健康被害を発生させている。健康被害が発覚し、県とPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の立ち入り調査では、多数の品目で承認申請と異なる製造工程で医薬品が製造されており、裏手順書まで存在していた。
 日医工も富山第1工場に於いて、10年間にわたり、承認された製品規格に合わないものの再利用や再サンプリングをするなど承認された製造工程と大きく外れた生産を行っていた。
 今回は2つのメーカーの問題発覚だったが、人命にかかわる医薬品を製造するメーカーが「安全と品質が第一」という大前提に対してのモラルハザードをおこしていると言わざるを得ない。人員、コストを低く抑えつつ製造し販売することを最優先としており、まさしく利益優先の姿勢がみられきわめて重大な状況といえる。
 また、厚生労働省が、後発医薬品の使用を推進する中で、この10年間の後発品使用割合は2倍となっている。その一方で、長期収載品メーカーの撤退を是とする薬価引き下げの新ルールを導入し、後発医薬品の薬価を採算ぎりぎりまで切り下げ、不採算になっても供給しなければならない薬価政策となっており、これが製薬メーカーの安全、品質保持を軽視した不正製造の原因の一端となっている。
 製薬メーカーの不正製造での操業停止の行政処分は、この5年間、2016年=化血研、2017年=山本化学工業、2019年=松浦薬業、2019年=協和発酵バイオとワクチン大手、先発原薬メーカーにも広がって頻発している。また現在の後発医薬品メーカーが多くの先発医薬品の受託製造をしていることをみても、医薬品の安全と品質保持は後発医薬品メーカーのみならず製薬業界全体の課題となっている。
 そして今回、後発医薬品メーカーとしては売上高で業界1位の日医工、4位の小林化工の不正製造により、後発医薬品を使用する患者の信用が失われつつあること、提供する医療機関・薬局の医師・薬剤師にも患者対応や医薬品代替え確保への対応などに多大なエネルギーを費やすこととなっている。

 以上から全日本民医連は小林化工、日医工に対し、直ちに第三者も入れた調査委員会を設置し、どのような事実があったのかをつまびらかにするとともに、企業ガバナンスの徹底とコンプライアンスの遵守、企業文化の刷新策も含めた再発防止策を定め医療従事者、国民に公表することを求める。
 また、日医工では不正製造が10年間、県の立ち入り調査をくぐり抜けている事実から、許認可を与える県と監督省庁である厚生労働省は、責任をもって医薬品製造業への立ち入り調査の抜本的体制・内容の強化を求めたい。
 現在、製造原価を下げるため海外への原薬依存がすすみ、世界的なコロナ禍で原薬供給が不安定となっている。原薬を含め後発医薬品を国内生産で「安全性」「有効性」「経済性」の三原則を担保した上で安定供給をさせる施策を早急に実施する必要がある。
 医薬品製造業は、国民の命と健康に直結する重要産業である。国、厚生労働省には、このコロナ禍の中でこそ、医薬品の安全、品質確保、安定供給を実現するための早急で抜本的な施策を求めるものである。

以上

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