いつでも元気

2007年3月1日

特集1 「友の会」ってこんなこともできるんだ!

『元気』還元金などで「たすけあい基金」

心のこもった助けあい活動。友の会って、こんなこともできるんだ|石川県での二つのとりくみを取材しました。 文・多田重正記者/写真・五味明憲

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よかったね! 中川さん夫婦と奥能登健康友の会事務局長・矢沢幸恵さん

奥能登健康友の会

“薬代の心配なくなった”

 輪島診療所は、医療費の支払いが困難な人を対象に「無料・低額診療」で患者負担を免除。さらに保険薬局の薬代も友の会で「たすけあい基金」をつくり、負担を免除しています。

「無料・低額診療」制度使って

 石川県輪島市大沢町。小さな港を見下ろす山あいにある集落に、中川辰雄さん(87)・キヨさん(87)夫婦は住んでいます。収入は辰雄さんとキヨさんの 国民年金をあわせて月五万円ほどです。しかし電気代は月七〇〇〇円もします。辰雄さんが在宅酸素療法を受けているため電気は命綱。これ以上削れません。
 辰雄さんは身体障害者一級のため、市に請求して医療費全額補助を受けていますが、キヨさんの医療費は家計の負担になっていました。二週間に一度、輪島診療所にバスで通っているキヨさん。服など何十年も買わず、家計も切りつめてきたといいます。
 昨年末、奥能登健康友の会事務局長・矢沢幸恵さんが声をかけ、「無料・低額診療」制度を使うことに。社会福祉法にもとづいて「生計困難者のために無料ま たは低額料金で診療をおこなう」事業で、輪島診療所が所属する石川勤労者医療協会では、法人をあげてとりくんでいます。
 輪島市河井町に住む、磯上かのさん(82)も制度を活用する一人。「診療所は心のささえ」「先祖にいただいた命だもの、粗末にはできん。みなさんから命いただいとる」と笑顔で話します。
 収入は、月三万五〇〇〇円ほどの国民年金。家は築一〇〇年を超え、雨漏りがするので貯金を取り崩し、屋根を補修したばかりです。

所得100万円以下が5割超

 「石川県民の所得を一〇〇%とすると、輪島市民の所得は六〇%しかない」と話すのは、輪島診療所事務長の濱茂夫さん。国保加入世帯では、控除後の年間所 得が一〇〇万円以下の世帯が、実に五割を超します(〇四年)。しかし生活保護率は一%と低い。わずかでも蓄えがあれば生活保護は認められないため、必要に 迫られて輪島診療所は二年前から無料・低額診療制度の活用に力を入れてきました。
 しかし、診療所で医療費が無料になっても、処方せんをもって院外で薬を受け取るため、薬代はかかっていました。

友の会費を無料にして

 そこで〇五年から始めたのが「たすけあい基金」。奥能登健康友の会でマイクロバスを買うために貯めていたお金約一〇〇万円と、『いつでも元気』販売所の 還元金(毎年一〇万円ほど)をもとに、無料・低額診療制度を利用している患者の薬代の負担をなくそうと決めたのです(〇五年度から実施)。利用者は、昨年 一二月は一一人でした。
 貯金を「たすけあい基金」に回そうと決めた背景には、友の会費の廃止(〇五年)にともなう議論がありました。
 「お金を払ってこそ会員の自覚が生まれる」という意見もありました。
 「でも会費の五〇〇円が払えないために友の会に入れない人もいたんですよ」と話すのは奥能登健康友の会副会長、屋名池晴紀さん(66)。「会費を無料に したことで、より多くの人に気軽に入ってもらえるようになりました」。こうした実感を友の会で共有できたからこそ、たすけあい基金はできたと振り返りま す。
 〇六年度、友の会員拡大では九月一五日から一二月末まで三八八人を拡大。「意思がある人は、みんな友の会員」との構えです。目標としていた四八〇〇人をこえ、三月末までに五〇〇〇人をめざそうとがんばっています。

地域に頼られる会に

 つい先日、ショックなできごとがあったと矢沢さん。輪島市でまだ五〇代の男性の孤独死があったのです。不況で勤めていた漆器屋の職を失ない、いっしょに住んでいた母親も亡くなり、最後には水道も止められていたといいます。
 友の会として何かできることはなかっただろうか。
 濱さんは「地域に頼られ、蕫相談は友の会にいこう﨟といわれる友の会になれば」と。矢沢さんも「地域でもっと旺盛に班会を開いて、相談事を気軽に寄せてもらえる。そういう開放的な友の会にしたい」と話してくれました。

元気な高齢者の“ともだち村”

夕日寺校下健康友の会

人気の喫茶室に 住宅も建設

 安心して住み続けられるまちをつくろう、一人暮らしの高齢者が気兼ねなく集まることができるコミュニティの場を。昨年一一月、金沢市・夕日寺校下の山王団地に、高齢者住宅に喫茶室をそなえた「ともだち村」がオープンしました。

手作り料理が楽しみで

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昼食はボランティアの手作り料理

 毎週木曜日、催し物でにぎわうともだち村。取材当日は、喫茶室の二階フロアで「てんとう虫教室」(転倒予防体操)がおこなわれていました。「つま先をぐーっと上に上げま~す! ゆっくりと降ろしま~す」
 トレーナーの合図にあわせ、体を動かす参加者のまなざしは真剣。この日、一二人が集まりました。みんな地元の山王団地の人たちです。
 体操の後は楽しみにしていた昼食。「ああ、おいしいおつゆ!」この日の昼食は、加賀野菜がメインで、長芋の唐揚げも登場。ボランティアの手作りです。
 食後はお茶を飲みながらおしゃべりしたり、歌ったり。常に笑いが絶えません。

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みんなで合唱、笑いが絶えません

「こんな場所が欲しかった」

 喫茶室は平日一〇時~一五時オープン。毎日きりもりしている中西明子さん(62)は「『最初は一人もお客が来ない日があるかも』っていわれたんですけど ね。誰も来ない日なんて一日もないですよ」。夕日寺校下健康友の会世話人・北澤寛司さん(63)も「『あんなところ絶対行くか!』っていっとった人がいち ばんよう来とるわ」と笑います。コーヒー、ジュースが一杯二〇〇円。一一枚つづりのチケットは二〇〇〇円です。ちなみにてんとう虫教室は月二回の六ヵ月 コースで一〇〇〇円、教室の昼食は一回五〇〇円です。
 ともだち村をつくるきっかけは、二年前に山王団地内で起きた、友の会員の孤独死でした。
 「一人暮らしの高齢者も安心して住み続けられる終の棲家をつくりたいと、いっしょに話していた仲間なんです」と話すのは、石田丞さん(69)。「夢を 語っていた仲間が亡くなって、背中を押されたのです」と北澤さんもいいます。
 山王団地は三七年前にできた市街近郊の住宅地。金沢駅からも離れ、通勤時間帯以外はバスも少ない。団地内にはスーパーなどもありません。山の上にあり、 坂道も多い。以前の新興住宅地がそのまま高齢化し、老後をどう迎えるのかが課題となっています。
 「金沢市の中心街にある高齢者マンションも見ましたが、ホテルのシングルルームを改修したようなところが多く、流しもない。ここで住み続けるのはつらい と思った」と石田さん。「やっぱり地域に安心して住み続けられる拠点を」という石田さんの熱意が友の会の中に広がっていきました。
 実現には、資金と、だれが運営するのかということが課題でした。土地は、友の会員が所有地を石川勤労者医療協会(勤医協)に寄付。土地を二つにわけ、高 齢者住宅(六戸)部分の土地を住宅業者に売って住宅の建設と管理を委託。そのお金でもう一方の土地に、喫茶室(二階はフロア)をつくりました。
 運営は友の会による「ともだち村クラブ」運営委員会がおこないます。定例(月二回)の「てんとう虫教室」のほか、誕生日会やおはぎ作りなど楽しい行事を おこなっています。「地域の友の会員が運営の主体になる新しい試みです。介護保険で認定されないような健康な人でも集まれる、コミュニティの場になれば」 と石田さんは希望を語ります。

口コミで評判が広がって

 一一月五日の開所式には、地域から一〇〇人を超える人々が集まり、地元の町会長もあいさつにかけつけました。
 地域の口コミで、ともだち村がうわさになりつつあります。隣町から来た人がコーヒーのチケットのつづりを購入。すると別の町の人がそのチケットを手に入 れて「どんなものか見てみようと思って来た」と訪れたこともあったと中西さん。「いざというときは、城北病院にかかれるの?」というので「もちろん。城北 病院に連絡をとって、かかれるようにしますよ」と話すと、「じゃあ、入るわ」と友の会に。オープン以来、ともだち村では一二月末までに約一〇人の友の会員 が増え、『元気』誌は六部増えたといいます。
 近く、石川勤医協が職員を派遣して、二階フロアでデイサービスもはじめる予定です。四月からは高齢者住宅の賃貸もはじまります。
 「老人会や公民館などとも連携して、蕫いつまでも安心して住み続けられるまちづくり﨟運動に役立つともだち村にできたら」と話す、金沢北健康友の会事務 局長の三浦彰さん(61)。北澤さんも「健康を中心にして、赤ちゃんからお年寄りまでみんなをフォローするとりくみを広げたい」と。夢はふくらみます。

いつでも元気 2007.3 No.185

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