民医連新聞

2021年5月6日

相談室日誌 連載496 行政が感染恐れ面談拒否 生活保護を代行申請

 昨年春のコロナ禍での事例です。
 患者は20代女性。接待を伴う飲食店(いわゆる夜の街関連)にアルバイトで勤めていましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い店自体の集客が減ったこともあり、解雇されてしまいました。所持金が底をつく中で、発熱。病院を受診したいものの所持金が1000円未満だったため、市役所など各方面に電話したところ、最終的に生活困窮者自立支援制度の相談窓口へ連絡するよう言われ、電話で相談しました。同窓口は、できるだけ生活保護以外の社会保障制度などへ紹介することが目的の機関で、各自治体が委託などしながら実施しています。
 ところが、自立支援制度の相談窓口は本人と面談することなく、また、生活保護課を紹介することもなく、無料低額診療事業を行っている当院へ行くよう伝えただけだったのです。自立支援相談所は熱があるという情報だけで、新型コロナウイルス感染症への感染を過度に恐れ、面談を避けたようでした。
 Aさんは当院の発熱外来を受診。かぜ症状だけでなく血液検査でも異常値があり、即入院が必要な状態でした。新型コロナPCR検査の結果が出る2日後に入院を予定し、一旦帰宅してもらうことにしましたが、とにかくお金がありません。その日の食事にも事欠く状態です。
 SWより生活保護課へ電話相談しましたが、なんと生活保護課からも「熱が治まってからの来所としてほしい」と言われ、交渉の末「熱のない病院職員が代わりに来所するなら、受診日にさかのぼって生活保護申請を受け付ける」との約束を取り付け、生活保護申請を代行しました。PCR検査は陰性だったので、予定通り2日後に入院。その後、生活保護受給が正式に決まり、退院後も安心して生活できるようになりました。
 未知の感染症への対応を恐れてのことかもしれませんが、無料低額診療事業だけでは所持金が1000円未満の人の生活をささえることはできません。行政機関にはコロナ禍だろうと最低限度の生活を保障するよう対応してほしいものです。

(民医連新聞 第1736号 2021年5月3日)

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