いつでも元気

2021年5月31日

けんこう教室 コロナ禍の受診

 コロナ禍の受診や共同組織の活動で気をつけるべきポイントについて、全日本民医連副会長の根岸京田医師に聞きました。

全日本民医連副会長
東京・蔵前協立診療所長
根岸 京田

―コロナ禍が人々の心身に与えている影響について教えてください。
 コロナ禍によって、人と人とのコミュニケーションが制限されています。友人や親戚に会えず、共同組織(友の会員や医療生協組合員)の活動も思うようにできません。このような状態が1年以上続き、多くの方々がストレスや不安を感じていると思います。
 外出の制限や自粛がかかるもとで、皆さんの身体にさまざまな影響が出ています。足腰が弱って疲れやすくなったり、体重が増えて血圧や糖尿病のコントロールが難しくなったり、その影響は全身に及んでいます。
 また、診療所の外来には「精神的に落ち込んでしまう」「不安になってしまう」という患者さんが多くいらっしゃいます。うつ状態の方が増えている印象があります。 
 高齢者のひとり暮らしで「外へ出られず、ずっとテレビを見ている」という方もいます。一日中家にいてコロナの話題をたくさん聞かされたら、気が滅入ってしまいますよね。
 
―感染の不安から外出や受診を控えている方も多いと聞きました。
 診療所に来られる患者さんが減ったのは確かです。軽い風邪症状などの場合に、受診を我慢して市販薬で済ませる方もいるのではないかと思います。
 さらに心配なのは、定期受診して服薬する必要があるのに受診を控えている方です。実際、血圧や糖尿病の薬が切れているのに「不安で受診できなかった」という方や、不眠症の薬でも「一回に飲む量を減らして受診を先延ばしにした」という方がいました。
 糖尿病の治療などは食事と運動が基本です。家から出られなくて体重が増えたり、心身の調子を崩して運動機能や病状まで悪化させてしまったら元も子もありません。
  
―病院や診療所の感染対策について教えてください。
 私が院長を務める蔵前協立診療所(東京都台東区)では、まず職員の体調管理を徹底しています。毎朝、体温を測って、体調の変化や症状がないかチェックします。
 診療所の玄関には手指消毒用のアルコールを常備し、来院した患者さん全員の体温を測ります。待合室ではマスクをしていただいて、こまめに換気をしています。定期的に座席などの環境消毒も行っています。
 37・5度以上の発熱がある患者さんは事前に電話していただき、診療所の前に着いた時点でまた電話をもらいます。他の患者さんと接触しないように、別室へご案内して診察します。
 どの病院や診療所でも、このような基本的な感染対策をしていますので、安心して受診していただければと思います。

―それでも心配な方に対して、何かアドバイスはありますか。
 いずれにしても、ひとりで抱え込まないでほしいですね。病院や診療所に電話して、混雑の状況や不安な点を聞いてみるなど、お気軽に何でもご相談ください。受診が外へ出る機会になりますし、受付で職員と会話するだけでも気がまぎれることがあります。
 コロナ禍が始まってから1年余りの間に、感染対策についての知識や経験が蓄積されてきました。マスコミやインターネットの情報に一喜一憂したり振り回されることなく、「正しくおそれる」ことが大切です。

―「正しくおそれる」とは具体的にどういうことですか。
 感染対策については、「これをすると危ない」「このくらいは大丈夫」という基準がはっきりしてきました。
 3密(密閉・密集・密接)のもとで、飛沫が飛ぶようなカラオケや大人数の会食などはかなり危険です。一方で人通りの少ない場所を散歩したり、公園で軽い体操をするなど、屋外での活動はそれほど制限する必要はありません。
 地域によってはみんなでラジオ体操をして、そのあと少し散策しているところもあります。気持ちがふさぎ込まないように、お互いに声をかけ合って行うことも大切です。

―共同組織の活動についてはいかがですか。
 感染対策を行いながら、工夫して活動されていることと思います。コロナ禍だからこそ、共同組織の地域づくりや仲間づくりの活動が求められている側面もあります。
 ただ共同組織の皆さんだけでは、感染対策に不安や限界を感じることがあるかもしれません。そういった場合、法人や事業所の感染対策委員会などに相談することをお勧めします。企画の内容や場所、参加人数などを記した計画書を提出して、コメントをもらうだけでも安心感が違います。企画が終わったら反省会をして、感染対策の観点から振り返ることも大切です。
 私の法人(東京保健生協)でも、共同組織から「フードバンクに取り組みたい」という声があがりました。会場の広さや参加人数、フェイスシールドや手袋などの防護策について、感染対策の専門家の目でチェックして取り組んでいただきました。

―ワクチン接種についてはいかがですか。
 かかりつけ医に相談しながら、基本的には接種したほうがいいと思います。
 ただ、16歳以上の対象者全員にワクチンを接種し終えるまでには、かなり時間がかかります。接種した方と接種していない方が混在する期間が、相当長く続きます。マスクをして3密を避けるなどの感染対策は、もうしばらく必要です。
 気がかりなのは変異株です。感染力が強いと言われますし、ワクチンが効きにくい可能性もあります。今後のデータの蓄積を注意深く見守る必要があります。
 
―最後に読者へのメッセージをお願いします。
 コロナ禍の最も切ないことの1つは、人と人との接触が制限されることです。電話やメール、ウェブなどを活用して、人間関係を維持するように心がけてください。心配や悩みをひとりで抱え込まないことも重要です。
 日常のコミュニケーションや活動のしかたについて、共同組織の皆さんの創意工夫にも期待しています。職員とよく相談して協力し合いながら、みんなで一緒に乗り越えていきましょう。

【お知らせ】根岸京田副会長は9月6日の全日本民医連共同組織活動ミニ交流集会(オンライン)で、記念講演「コロナ禍における民医連の取り組み」(仮)を行います


コロナ禍の受診のポイント

●定期受診のサイクルを守る
●感染をおそれて受診をためらい、病状を悪化させることのないように
●心配や悩みをひとりで抱え込まず、何でも相談する

いつでも元気 2021.6 No.355

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