民医連新聞

2021年6月8日

ひとりひとりの「わたしの民医連」 綱領こそがみちしるべ 福岡 千鳥橋病院

 6月7日は全日本民医連結成の日。戦前の無産者診療所を源流に生まれた民医連運動を、コロナ禍の今こそ引き継ぎ、発展させていくことが求められています。福岡・千鳥橋病院では職員の民医連への思いをまとめた冊子、『わたしと民医連 18のものがたり』を作成し、その思いを共有しています。(稲原真一記者)

 昨年4月、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が発出される中、千鳥橋病院でもさまざまな困難に直面しました。そのひとつが職員教育です。それまでは月1回の集団研修をしていましたが、対面での学習会は開催できなくなりました。「お互いの顔が見えない難しさが生まれた」と話すのは、千鳥橋病院の副事務長・伊藤豪志(つよし)さん。法人(福岡医療団)の教育委員で、千鳥橋病院教育委員会の事務局も務めています。

困難な時こそ学習を

 従来通りの方法が難しくなり、どのように学習を継続するかが、教育委員会での大きな課題になりました。オンライン学習会など、いろいろな方法が検討される中、一昨年に行われた「民医連の綱領と歴史」の学習運動が話題になったと言います。法人教育委員会のとりくみで、綱領の感想だけではなく、“わたしと民医連”という民医連に対する思いを寄せてもらいました。病院の教育委員会ではこれを冊子にして、活用できないかと議論になりました。
 千鳥橋病院の副総看護師長で教育委員の南尚恵(ひさえ)さんは、「思いを共有する場がない中で、職員が読んで元気になれるものをつくりたいと思った」と当時をふり返ります。病院の正職員約200人分の“わたしと民医連”をそれぞれ委員で読み込み、投票形式で掲載文章の選考を行いました。

引き継ぐ思い

 南さんは選考をすすめる中で、「共通するのは“いのちの平等”だと気づいた」と言います。職種や立場は違っても、それぞれが民医連綱領の“いのちの平等”の視点に立って奮闘する思いに触れ、「これを職員に届けなくては」との気持ちが強くなりました。
 掲載文は約半年かけて選考し、選ばれた18本の文章は民医連歴2年目から25年目、職種もさまざまなものになりました。編集作業を経て、今年の3月に発行。発行部数は1000部で、病院職員や県連内の他事業所に配布し、好評です。話を聞いた他県連からも送ってほしいと依頼がありました。「民医連歴の短い職員でもこんなことを学んでいるのか」「長年働いてきた人にこんな思いがあったのか」と気付かされる内容で、「他の職員の思いが知れてよかった」との声があがっています。

* * *

 南さんは力を込めて言います。「現場では時に心ない言葉を浴びせられ、つらくて苦しい時、なんのためにがんばっているのかを見失いそうになる。そんな時に“なんのために、誰のために”と立ち返り、同じ方向をむけるのが民医連綱領なのだと思う。だから困難な時こそ、学習を止めてはいけない」と。
 「ひとりひとりが民医連の活動の中で、ささえとなる患者や仲間との出会いがあります。この冊子を通してその経験と重ね合わせ、『ここで働いていてよかった』と思ってほしい」と語ります。


千鳥橋病院がほこるチーム医療(冊子本文より一部抜粋)

 ―Mさんは、60代でしたが脳梗塞や脳出血を繰り返しており、失語がありジェスチャーで意思疎通を行っていました。(中略)病棟で多職種合同のカンファが開催され、リハビリスタッフから「最近気分の落ち込みがみられ、リハビリもあまり乗り気ではない」という話を聞きました。なんとか気持ちを上げる方法はないかと考えていた時に、通所リハが夏祭りをするという話を聞きました。Mさんはお祭り好きだったので絶対に喜ぶと思い、病棟、通所リハから許可をとり、患者さんに「夏祭りに行きましょう!」と誘いに行きましたが苦笑いをしながら断られてしまいました。お節介なことをしてしまった、と反省しながら通所リハに伝えに行くと、通所スタッフが「絶対におかしい、私たちが誘いに行くよ!」と法被とうちわを持って患者さんのもとに来てくださいました。Mさんも涙を浮かべながら「行く!」と夏祭りに参加しました。入院したと聞いて心配していた他の利用者さんと再会を喜びながら、入院中一番の笑顔をみせていました。私だけでは彼の笑顔は引き出せませんでした。(中略)
 医療は、1つの職種のみではできないと思います。この方の人生において、私はほんのわずかなことしかできませんでした。しかし、多数のスタッフさんと連携して、患者さん、そしてご家族の納得のいく治療を行うことができました。この連携の取りやすさは「千鳥橋病院」「民医連」ならではだと思います。
 今後も様々な困難を抱えた患者さん一人一人と向き合い、皆さんと協力しながらより良い医療が出来るようがんばりたいと思います。(医師、3年目)

(民医連新聞 第1738号 2021年6月7日)

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