民医連新聞

2021年6月22日

あれから10年 私の3.11 ⑧困難あるところに民医連あり

岩手・川久保病院 小野寺 けい子

 私の勤務する川久保病院は、三陸沿岸から約100km内陸の盛岡市内にあります。あの時、震度5弱の大きな揺れでライフラインがすべてストップし、当初は入院患者の安全確保に必死でした。大船渡民商から支援の拠点場所が提供され、ライフラインが復旧した約1週間後、スタッフとともに必要物資をマイクロバスに積み込んで出発しました。現地に赴くと、浜風が砂塵(さじん)を舞い上げ、見渡す限りがれきの山で、毎日この情景を見ながら避難生活を余儀なくされている人びとを思うと胸が痛くなりました。
 小県連である岩手独自での支援継続は困難でしたが、すぐに北海道・東北地協を中心に医師、看護師などの派遣が始まり、5月まで大船渡市漁村センターに臨時診療所を設置し活動しました。まさに全国組織としての民医連の底力を実感しました。そして職員、組合員が共同した被災地の組合員訪問なども展開され、現在も一部継続しています。
 岩手の沿岸被災地は以前から高齢化率が高く過疎地域でした。震災後、基幹産業の漁業・水産加工業の再建・整備がすすめられてきましたが、サケ、サンマ、イカなどの主要魚種の大不漁がここ数年続いています。ワカメ、ホタテなどの養殖産業も振るわず、今回のコロナ禍がさらに観光産業などへの大きな経済的ダメージをもたらしています。
 この4月末に陸前高田市で東日本大震災・津波10周年記念集会が開催され、参加しました。市中心部には立派な市庁舎や復興記念館、ショッピングセンターなどが建てられていますが、かさ上げされた広大な土地は空き地のままでした。昨年の国勢調査で沿岸部は5年前よりさらに約1割の人口減になっています。復興の進展に伴う工事関係者の転出も一因とされていますが、被災者の生業(なりわい)や生活再建がすすまない中では、被災地での生活継続は困難なことを物語っています。
 この間、被災地住民の医療と健康を守るために国保や後期高齢者の医療費減免を実現してきました。しかし、県はこの4月からは減免対象を非課税世帯に限定し、12月には免除を終了すると発表しています。
 丸10年は復興の通過点にしかすぎません。「人びとの困難あるところ民医連あり」の旗を掲げ、これからも地域の人びととも協力して活動を継続したいと思います。(医師)

(民医連新聞 第1739号 2021年6月21日)

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