いつでも元気

2021年6月30日

青の森 緑の海

写真と文 今泉真也

2019年 名護市大浦川

 米軍の辺野古新基地建設が進む大浦湾。その湾を、長い時間をかけて形成したのが大浦川である。湾をつくったのは雨と川であること、雨雲は海から生まれることを意識すると、風景のつながりが見えてくる。
 大浦川には名護市の天然記念物に指定されているマングローブ林がある。マングローブは熱帯から亜熱帯の潮間帯に分布する100種ほどの植物の総体で、大浦川ではメヒルギやオヒルギの林が広がっている。
 彼らは塩分の濃い場所に好んで住んでいるわけではなく、地上に露出している根を発達させたり、細胞の浸透圧を最適化する高度な生存戦略を駆使して居場所を得た。
 泥中からは酸素供給がほぼ望めないため、地下根はフル稼働で体の上部から酸素を供給してもらう必要がある。そこで、地下根の活動で発生した二酸化炭素を地上根部分で酸素に変換し(根での光合成)、また地下根に戻す、という見事な循環型呼吸を実現しているという。
 さらに種によっては、塩分を葉に凝縮させ落葉することで体外に排出する仕組みを生み出した。その落ち葉は川に養分を与え海の魚を育む。
 「静寂の森」といわれるその内側では、生存のための熾烈な活動がきょうも続いている。


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。

いつでも元気 2021.7 No.356

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