声明・見解

2021年6月23日

【声明2021.06.22】あらためて、東京オリンピック・パラリンピックの中止を求めるとともに、実施を強行する場合、専門家「提言」に対する政府・組織委員会の真剣な対応を求める

2021年6月22日
全日本民主医療機関連合会
会 長 増田 剛

(1)あらためて、東京オリンピック・パラリンピックの中止を求める。

 私たち全日本民主医療機関連合会は2月15日に国民のいのちを守る立場から、東京オリンピック・パラリンピックの開催中止を求める声明を発表した。その後各世論調査で6~8割の国民が中止・再延期を求めているにもかかわらず政府と組織委員会は中止できない理由を説明しないまま、開催を強行しようとしている。
 政府は、6月20日沖縄県を除き緊急事態宣言を解除し、東京・大阪など10都道府県に対しまん延防止重点措置を7月11日まで適用した。専門家会議も指摘しているように、首都圏の人の動きは増加の一途をたどっており、東京の感染者数は前週を上回り、既にリバウンドの兆しが表れている。
 さらに東京オリンピック(7月21日から一部競技開始、8月8日閉会)、パラリンピック(8月24日開会、9月5日閉会)は、夏季休暇やお盆による移動とも重なること、オリンピックは9都道県にまたがる43会場、パラリンピックは4都県21会場で実施されることから、都道府県を超えた移動を禁止し、県内だけの移動であっても相当数の人の動きが発生することは避けられず、感染力の高い変異株(デルタ株)の拡がりも考慮すると五輪開催は感染拡大の強力な呼び水となる。
 医療従事者は、第3波から連続した第4波への対応、並行して進めているワクチン接種の中で、限界を超えた過酷な状況にある。その上にオリンピック、パラリンピックによる負荷を与えることなどあってはならない。政府がやるべきことは、医療現場に出向き、寄り添い、声を聞き、医療が少しでも余裕をもって次の感染への備えを進められること、希望者へのワクチン接種が安全に進められることに必要な支援を充分に行うこと以外にはない。
 パンデミックは続いており、今も尚1日当たり約40万人の感染者が発生し約1万人が命を落としている。ワクチン接種が殆ど進んでいない国が多数存在する中で予選にすら参加出来ない選手がいるということや、参加辞退を表明する選手・チームが相次いでいることが報道されている。その他一部のパラアスリートの感染時重症化リスクを指摘する意見も出されている。
 菅首相自身もその意義を説明出来ないように、こうした状況下での五輪開催は、既にその大義を失っている。
 政府と大会組織委員会が冷静に状況を見つめ、国民のいのちと健康を守るために、今夏の東京オリンピック・パラリンピックを中止する決断をおこなうことを再度要望する。

(2)政府・東京都・組織委員会に対し、「五輪観客1万人開催」等の5者協議決定を撤回し、6月18日専門家「提言」に対する真剣な対応を行う事を求める。

 6月21日に政府、東京都、組織委員会、国際オリンピック委員会、国際パラリンピック委員会で5者協議が行われ、五輪の観客数上限を「収容定員の50%以内で1万人」とし、大会関係者と「学校連携」として観戦する全国の小中高生は別枠とすることなどを決定した。
 この決定は、6月18日に政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家が提出した「提言」を何ら踏まえることなく、科学的な根拠のないものであり撤回を求める。
 尾身氏らの「提言」は、緊急事態宣言解除以後、感染拡大及び医療ひっ迫を招かないようにする必要から、現在の感染状況について厳しい認識を示した。それは、データを根拠に、ワクチン接種が順調に進んだとしても、7月から8月にかけて感染者及び重症者の再増加の可能性について、変異株の影響も想定した強い危機感を提示するものである。
 加えて、五輪開催に伴って新たに生じる感染拡大の可能性について、開催に伴う人の移動・接触機会の増大に伴うリスクや、有観客とした場合に市民が協力する感染対策にとって「矛盾するメッセージ」となるリスクを提示した。
 そして「提言」は、感染拡大リスクを軽減するための選択肢として、政府と組織委員会に対して、(開催するのであれば)「無観客開催が最も望ましい」「観客を入れる場合も、現行の大規模イベントの基準よりも厳しいものとする」「観客は開催地の人に限る」「大会主催者は応援イベントを中止する」「感染拡大や医療ひっ迫の予兆が察知された場合、開催中であっても、緊急事態宣言を出せる準備をし、実行する」「リスクをいかに軽減するか、どのような事態になれば強い措置を講じるのか、考え方を早急に市民に知らせる」などを要望した。
 政府と大会組織委員会が、自ら「大会を開催する」と決定するのであれば、結果についての責任をすべて負うのは当然であり、責任を回避することは絶対に許されない。ましてや、「提言」に「開催中止」が無かったことで、あたかも専門家が開催にお墨付きを与えたかのような発言は言語道断である。
 全日本民医連は、政府・東京都・組織委員会に対し、「提言」を踏まえたうえで、最低でも「提言」の内容を遵守することを求める。

以上

PDF

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ