民医連新聞

2021年7月6日

相談室日誌 連載500 妻もがん末期で入院 身寄りのない人の支援通して(群馬)

 身元保証人がいない60代男性Aさんの事例です。急性期病院から心筋梗塞、誤嚥(ごえん)性肺炎後の廃用症候群で当院にリハビリ転院してきました。既往に筋ジストロフィーなどがあります。歩行にふらつきあり、見守りが必要。嚥下(えんげ)障害もあり、ミキサー食で、水分にとろみが必要な状態です。50代の外国人の妻との2人暮らし。入院前まで警備員の仕事をしており、妻も仕事をしていたので、家計は別々の生活でした。入院当初、妻自身も「セキトマラナイヨ。シゴトヤメタヨ」との訴えがあり、病院に受診することを勧めていました。
 入院中、主治医から「今後だんだん歩けなくなり、食事も食べられなくなっていく。注意障害もあり、車の運転は控えるように」と病状説明は受けていますが、本人は、「退院したら、車の運転をして仕事に行かなくては」と病気に対する受容ができていない様子でした。
 退院の準備をすすめようとした矢先、妻ががんの終末期にて、急性期病院に入院。妻の支援を期待できなくなりました。夫婦ともに進行する病気を抱え、身元保証人がいなくなりました。金銭管理が困難なため、社会福祉協議会に日常生活自立支援事業の依頼をするも、「新規の申込者が多く、対応できない」との話でした。単独での移動は困難なので、SWは本人といっしょに、妻との面会や金銭管理、年金の手続き、買物の支援をしました。自宅が散らかっていたため、病院スタッフや退院後にかかわる在宅チームなどの協力を得て、自宅を片付け、環境を整えました。そんなかかわりの中で、本人も病状を受け止め、SWや病院スタッフとの信頼関係が強くなったように感じます。退院後も必要な医療、介護サービスが受けられるよう、社会福祉協議会や後見人、身元保証サービスが入るまで、SWが金銭管理を続けています。
 身元保証人(身寄り)のない人は増えています。移送や金銭管理、買物(入院・退院に必要となる物)、家の片付け、行政手続きとさまざまな支援が必要です。病院の善意だけでは対応しきれないと感じます。身寄りのない人の支援の充実を願います。

(民医連新聞 第1740号 2021年7月5日)

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