民医連新聞

2021年7月6日

今もがんばるみなさんへ 私たちの経験・教訓 全国に届けたい コロナ禍での職員のヘルスケア交流集会

 全日本民医連は6月5日、「コロナ禍での職員のヘルスケア交流集会」を開き、39県連から290人が参加、兵庫・尼崎医療生協の経験に学び交流しました。同法人の石川和寿さん(看護師)は「尼崎医療生協COVID―19メンタルヘルスサポート活動のまとめ」と題して報告しました。

 尼崎医療生協病院では昨年12月11日~今年2月10日にかけ、入退院患者65人、医療従事者など56人、計121人が新型コロナウイルスに感染する大規模クラスターを経験し、法人をあげて職員のメンタルサポート活動にとりくみました(全体像は図1)。

■毎日の電話に「安心できた」

 発生直後には、陽性・濃厚接触職員への電話フォローと配布書類を作成。電話は原則、毎日全員に行い、ピーク時は1日25~27人、収束まで続けました。
 約10日後からは、徐々に職員が復帰しはじめ、復職者全員への面談を実施。気になる職員計4人は院内の心理職に紹介し、全員が職場に復帰しています。後遺症で休職延長となった職員は11人、長い人では1カ月延長しました。
 大半の職員は電話フォローが負担にはならず、かえって「病院とつながっている」「安心できた」との声が聞かれました。療養中の様子を把握でき、復職面談もスムーズでした。後遺症として、メンタル面で家族に感染させてしまった自責の念などがあり、身体面は倦怠感、咳嗽(がいそう)、筋力低下など。ホテルでの隔離生活中の孤独や差別された経験も聞かれました。

■以前からある職場課題が噴出

 3週間後からは、凄惨(せいさん)な現場で働き続ける職員へのアプローチが必要と感じ、集団感染が発生した当該の3病棟の看護職員59人に面談を実施。目的は(1)罹患(りかん)せず勤務を続ける職員のメンタルヘルスの実情を知ること、(2)高ストレス者のスクリーニングとしました。
 管理部門からの情報共有が一方通行で問題があった、と感じる職員もいました。いち看護師として感染への恐怖、「家族のために絶対感染できない」との思い、感染して亡くなる患者をみるつらさ、「戦争の時はこんな感じなんだろう」など、どうにもできない無力感も抱いていました。日常のケアの質が落ちたと感じたり、感染対策が不十分だと感じることも。一方、家族や周囲からのささえを実感し、全国の仲間や率先して食事介助に入った技術系職員の「支援がうれしかった」との声もありました。
 生活者として周囲の目を気にしながら勤務しており、わずかな体調変化でも感染を疑う「不安」がありました。それぞれに事情も抱えていました。「相談できる場所がなかった」と感じる職員、以前から感じていた職場の課題を背景に、感染拡大で退職を考えるに至った職員もいました。
 他方、管理者9人の時間外勤務に相当する時間数を調査すると、12月は1人あたり平均110時間(最大141・4時間)、1月は平均62・9時間(最大97・1時間)に激増していました。「疲労蓄積自己診断チェック」を実施し、特に疲労度の高い5人に産業医面談を行い、中にはカウンセリングにつないだ例もありました。

■相談者は待たずにこちらから

 全職員へのアプローチも必要と考え、COVID―19メンタルヘルスアンケートを実施。質問は「セルフケアのための10のヒント」を参考に10項目とし、それぞれ自由記載欄も設けました。提出は任意、記名式とし、病院107人(提出率26%)、法人全体で358人(同38・7%)が回答しました(結果の一部は図2~5)。この結果から高ストレスと判断された14人など、計15人を個別に相談窓口につなぎました。

* * *

 今回、COVID―19の集団感染をきっかけに、普段からの職場づくりの課題が噴出しました。中でも情報共有のあり方の課題が大きいと感じました。相談窓口を設置するだけでは相談はほとんどなく、「聞きに行く」姿勢が重要だということもわかりました。


最前線の現場から

大阪・耳原総合病院
平井美香さん(看護師)の特別報告より

 大阪では第4波で重症患者が急増し、当院HCUもコロナの重症対応に転床せざるを得なくなりました。日に日に追い詰められ切実になっていく看護師の声。重症管理ができる看護師の代わりがおらず、先も見えず、経験を生かせず自信を失い、4~5時間レッドゾーンから出られないことも。気力・体力も枯渇し、使命感だけでは続かない状況でした。
 そんな中、当院でもさまざまなメンタルヘルスケアを実施。職員間で主体的に始まった交換日記には管理者も元気づけられました。
※石川さんと平井さんの報告を含む集会の模様は、全日本民医連ホームページ(職員のページ)で、動画にて公開中。

(民医連新聞 第1740号 2021年7月5日)

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