いつでも元気

2021年7月30日

終活講座 
エンディングノート(4)

 エンディングノートの記載事項として、医療に続き介護を紹介します。
 エンディングノートのうち、介護に関するものは特に注意が必要です。それは書き残すことで、のちのちトラブルの“元”になることもあるからです。
 例えば「誰に介護を担ってほしいですか」という項目に関し、「長女」と書いたらどうなるでしょう。指名された長女が介護を担うことが難しくても、「本人が長女に行ってほしいと望んでいるのだから」と、他の兄弟姉妹から介護を押し付けられてしまうかもしれません。
 「介護費用の負担」に関しても同様です。家族の誰かを指名すると、その人に負担がかかってしまいます。また、「介護を受ける本人の年金や預貯金の範囲内で」と指定した場合は、その金額を超えた時にどうするのかという問題が起きます。
 介護をしてほしい場所に関しても、「なるべく自宅がよい」と指定したら、同居している家族が自宅介護を強いられるかもしれません。

「あえて残さない」ことも

 エンディングノートは、質問に対して選択肢から選んだり記述します。それがたとえ書いたご本人の「要望」や「願い」だとしても、指名や指定をすることは避けたほうがよいのです。
 「誰が」「どこで」「何を」を明らかにしてしまうと、その情報が確定事項になって、一人歩きする傾向にあります。このことは、常に頭に入れておかなければなりません。
 親の介護を兄弟姉妹全員が均等に担うのは難しいのですが、一般的には何らかの協力を得ている場合が多いものです。ところが特定の個人が指名されると、それを口実に「自分は介護には無関係だ」と主張できる状況を作ってしまうことになりかねません。
 まじめな人ほど、「エンディングノートの全項目を埋めなくては」と思ってしまうかもしれませんが、あえて書き残さないという選択もあることを覚えておいてください。
 介護の項目に関しては、その内容を口頭で配偶者や子どもたちに伝えるのみにとどめても構いません。また、何も書かずに家族の判断に任せるといった方針でもよいでしょう。


明石 久美(あかし・ひさみ)
明石シニアコンサルティング
明石行政書士事務所代表
相続・終活コンサルタント、行政書士
ファイナンシャルプランナー(CFP)
千葉県松戸市在住
著書に『死ぬ前にやっておきたい手続きのすべて』(水王舎)『配偶者が亡くなったときにやるべきこと』(PHP研究所)など
■相続・終活・老い支度相談所
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いつでも元気 2021.8 No.357

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