いつでも元気

2021年7月30日

お金をかけない健康法

 コロナ禍で高齢者のフレイル(心身の衰え)の進行が心配です。昨年来、私の外来患者さんにも、心配な方が増えています。
 Aさん(70代女性)は元着付けの先生。夫を7年前に亡くし、現在はひとり暮らしです。慢性胃腸炎、腰痛症、不安症などで、毎月1~2回ほど通院。コロナ禍で以前より受診回数が増えたAさん。この1年の診療を振り返ります。
【(昨年)春】「胃痛がとても辛い」と胃部を押さえながら診察室に駆け込む。だるくて食欲が減退し体重も減少。コロナの感染拡大で「訪問リハビリも心配」と訴える。
【夏】体重が7kg減。足腰が痛く、杖歩行。やる気が出ない。孫・ひ孫とずっと会っておらず寂しい。
【秋】せきと痰が出て「コロナに感染しているかも」。動悸も激しい。
【冬】不安で買い物にも出られず、ヘルパーにお願いしている。ラジオを流しっぱなしで悲観的になる。神経科から安定剤を処方された。
 これに対して、Aさんの身体の状態を診ながら必要な検査を行い、アドバイスをしてきました。
【(昨年)春】胃カメラ、腹部エコーともに問題なく、胃炎です。栄養を十分にとりましょう。訪問リハビリは感染対策がされていますので、継続してください。誰とも会わない孤立感のほうが心配です。
【夏】少しずつでも身体を動かしましょう。孫・ひ孫に会えないのは辛いですが、電話などでのコミュニケーションと、思い切ってスマホデビューはいかがでしょうか。
【秋】検査結果を見ると、肺炎もコロナもありません。心電図、血液なども正常範囲です。漢方も併用して症状を緩和させましょう。
【冬】神経科との併診で、心身の治療とリハビリを続けましょう。外に出れば、少しは気持ちもリフレッシュできます。
 フレイル予防のポイントは「食事」「運動」「人とのつながり」です。感染対策をしながら、可能な限り心身の健康を保てるように工夫して乗り越えましょう。

〈フレイルの判断基準〉
(1)体重減少(2)倦怠感(疲れやすさ)(3)活動量低下(4)筋力低下(5)歩行速度低下のうち、3つ以上に該当する場合をフレイルと呼ぶ
〈フレイルを予防するには〉
食事 栄養バランスよく、特にタンパク質の摂取を心がける
運動 人との距離をとってウオーキングなど。家の中でもできる範囲で身体を動かす
人とのつながり 家族や友人と意識して連絡を取り合う。挨拶や何げない会話も大切。電話やオンラインも活用する


大場敏明
おおば・としあき
1946年、新潟県生まれ。千葉大学医学部卒、内科医。船橋二和病院、東葛病院、みさと協立病院などを経て、クリニックふれあい早稲田(埼玉県三郷市)院長。著書に『ともに歩む認知症医療とケア』(現代書林)、『ドクター大場の未病対策Q&A』(幻冬舎)、『かかりつけ医による「もの忘れ外来」のすすめ』(現代書林)

いつでも元気 2021.8 No.357

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