いつでも元気

2021年7月30日

コロナ禍のもとでの支えあい(下)

文・新井健治(編集部)

宮城・仙台南健康友の会の「健康カフェ」。長町病院の看護師が復興公営住宅の入居者の相談に乗る(平尾伸二さん提供)

宮城・仙台南健康友の会の「健康カフェ」。長町病院の看護師が復興公営住宅の入居者の相談に乗る(平尾伸二さん提供)

 コロナ禍における人と人とのつながりづくりとは。
 7月号に続き、千葉大学の近藤克則教授とともに考える。

 本誌「生きいき活動あらかると」のコーナーには、コロナ禍のこの1年でも共同組織(友の会員や医療生協組合員)から、さまざまな活動が寄せられた(204人から712通)。
 「屋外に会場を移して体操を再開」「お弁当抜きで歩こう会を始めた」「吹き矢班の代わりにお出かけ班会を計画」「健康祭りを中止にしてウオーキング」「作った料理は持ち帰る料理教室」など、感染対策を工夫している。
 道東勤医協友の会連合会(北海道)の亀井武会長は「こんな時だからこそ友の会の出番と、会員の皆さんが多くの地域で健康づくりを計画。室内のふまねっとや体操は換気と検温、手指消毒に三密を避けて実施、パークゴルフやウオーキングなど屋外の企画も行いました」と通信を送ってくれた。
 班会やサークルの再開にあたり、感染対策の指針を示す共同組織も多い。例えば栃木保健医療生協は昨年6月、「地域活動再開のガイドライン」を作成。運営上の注意点を列挙したチェックリストを用意し、組合員が安心して活動できるようにした。
 近藤克則教授は「安全で必要な運動や交流は削るべきではない。屋外での運動や散歩は不要不急にはあたりません」と指摘する。

ネットを活用した交流

 それでも、顔を合わせて集まることに抵抗を感じる人もいるだろう。そうした時にはインターネットをはじめ、電話や手紙を活用した交流でも効果がある。
 近藤教授を中心にした研究グループ「JAGES」(日本老年学的評価研究)の調査によると、インターネットを使って友人や家族と交流している人は、使っていない人に比べてうつ発症率が3割も少なかった。興味深いのは買い物や情報収集といった目的での利用では、効果がなかったことだ。
 コロナ禍のもと催しや集会をリモートで開催したり、録画して後から配信する共同組織が増えてきた。会場の定員を減らす代わりに開催日や会場数を増やすなど、さまざまな工夫を凝らしている。例えば西京健康友の会(京都)は今年3月から、ネットで病院の会議室と友の会員宅や事務所をつなぎ医療懇談会を開いている。
 電話で安否確認をしたり、困りごとを聞くなど「声の訪問」も盛んに行われた。また、「交換ノートで職員と組合員が励まし合っ
ている」(宮崎医療生協)、「友の会員に手作りの絵手紙を送った」(熊本・みなまた健康友の会)など、多彩な方法でつながりをつくり続けている。

動画で体操を配信

 自宅で運動ができるよう、多くの民医連事業所が動画を作成したのも特徴だ。上京診療所(京都)は今年5月から「ユーチューバーかみぎょう診療所のヘルスプロモーション学校」と題し、作業療法士と理学療法士が、『いつでも元気』の「レッツ体操」を使った動画を配信している。
 動画はほかにも「自宅にあるもので出来る健康体操」(東京・すこやか福祉会)「おうちトレーニング」(奈良・メディカルフィットネスあおがき)「かわっち健康チャンネル」(大阪・医療生協かわち野)など。機関紙でフレイルを予防する体操を紹介した姫路医療生協(兵庫)や本間病院友の会(山形)のような取り組みもある。
 近藤教授は「たとえネット上でも、人との交流には効果がある。画面を通して体操やおしゃべり、カラオケをするなど、さまざまな工夫が心身を健康にしてくれます」と語る。
 長引くコロナ禍のもと、感染リスクを抑えたうえで、どのように人と人とのつながりを取り戻すのか。10月から共同組織拡大強化月間が始まる。改めて民医連と共同組織の底力が問われている。


近藤克則(こんどう・かつのり) 
千葉大学予防医学センター教授、国立長寿医療研究センター老年学評価研究部長。1983年、千葉大医学部卒。船橋二和病院リハビリテーション科長などを経て2014年から現職。「健康格差縮小を目指した社会疫学研究」で20年度「日本医師会医学賞」受賞。『健康格差社会への処方箋』(医学書院)、『長生きできる町』(角川新書)など著書多数。

いつでも元気 2021.8 No.357

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