民医連新聞

2021年8月3日

診察室から 患者とのマスクコミュニケーション

 マスク着用が当たり前になったことで、最近は顔を覚えることが難しくなったと感じます。マスクを着けた顔とマスクを取った時の顔の印象が異なるからです。
 これまでも、訪問診療時にベッドで横になっている姿しか見たことのない人が、通所サービス時に車いすに座っている顔を見た時、職員に名前を教えてもらうまで担当患者だと気づきませんでした。臥位(がい)と座位姿勢でこんなにも印象が異なることに驚きました。また別の訪問先では、寝ている姿しか見たことのない人が、入院中は自分でベッドから起き上がり、自立して食事を摂取している場面を見てやっと、家族から聞く日常とリンクされ、生活場面を想像することができました。これらのエピソードから、一場面のみの印象で、自分の中に勝手なイメージをつくってしまうと、その人に対する理解を狭めてしまうと感じました。
 マスク着用下でも、マスクを含めて顔を認識することで、マスクを取った顔をイメージできず、その人自身を覚えることができていませんでした。患者は病院の中、外、そしてマスクを着用した顔、マスク下の顔でそれぞれ違いがあり、いろんな場面でかかわることで、その人となりを理解することに近づくと感じました。
 医療従事者側から見た患者もそうですが、患者もマスクを着けている医療従事者を識別することは難しいのではないかと思います。医療従事者はマスクの他にフェイスガードも着用しており、顔のほとんどが隠れています。そのため表情が読めず、怖い印象を与えてしまうこともあると思います。そこで、白衣の色を変えて話題をつくったり、顔の大半が隠れていても表情を理解してもらえるように、隠れていない部分でしっかり表現して患者とコミュニケーションをするように心がけました。
 顔からの情報は制限されていますが、顔の表情筋と表現能力を鍛えて、患者とマスクコミュニケーションをしっかり行い、今後の関係づくりをしていきたいと思います。(岩本和恵、福井・光陽生協病院)

(民医連新聞 第1742号 2021年8月2日)

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