いつでも元気

2021年8月31日

お金をかけない健康法

 コロナ禍のもと、昨年度は健診(検診)の受診控えが目立ちました。緊急事態宣言が出た昨年4月から6月まで、健診は実に5割超の減少です。がん検診については3割も減りました。今年度も「控えたい」とする人が約3割に上っています。私の外来でも健診に関する質問が出されます。
 確かに以前は、3密になりかねない健診会場もありました。しかし、現在は各健診事業所での感染対策が徹底されています。医療機関での健診も院内感染防止のガイドラインなどにのっとって、受付時間や受診者同士の間隔に配慮したり、スタッフの感染防護など対策を講じています。
 もし心配だったら、電話などで状況を確認されてはいかがでしょうか。マスクや手指消毒など感染対策をしつつ、ぜひ定期的に健診を受けましょう。
 日本肺癌学会は昨年1~10月の新規患者数が、1年前と比べて6・6%減ったと発表しました。約8600人の診断が遅れ、治療の機会を逃したと推定しています。明らかにコロナによる検診控え、受診控えの影響と思われます。
 診断・治療の遅れは、治療費の面でも負担となります。例えば大腸がんの場合、早期なら内視鏡手術で済みますが、進行性だと開腹手術か腹腔鏡下手術が必要です。体への負担とともに、入院期間も治療費も10倍ぐらい違ってきます。
 慢性病の早期発見・早期治療は、成人の健康管理のうえでとても重要ですが、コロナ感染対策の面からも重要だと強調されています。それは、慢性病・基礎疾患を持っている方がコロナに感染すると、死亡率が高くなるからです。
 コロナによる死亡率は、心血管疾患で10・5%、糖尿病で7・3%、慢性呼吸器疾患で6・3%、高血圧で6%、それぞれ上がるというデータがあります。これらの慢性病の早期発見と早期治療、病状の安定が、コロナ重症化予防のためにもとても重要なのです。


大場敏明
おおば・としあき
1946年、新潟県生まれ。千葉大学医学部卒、内科医。船橋二和病院、東葛病院、みさと協立病院などを経て、クリニックふれあい早稲田(埼玉県三郷市)院長。著書に『ともに歩む認知症医療とケア』(現代書林)、『ドクター大場の未病対策Q&A』(幻冬舎)、『かかりつけ医による「もの忘れ外来」のすすめ』(現代書林)

いつでも元気 2021.9 No.358

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