いつでも元気

2021年8月31日

青の森 緑の海

写真と文 今泉真也

2019年 泡瀬干潟で休息する渡り鳥。背後で埋め立て工事が進む

2019年 泡瀬干潟で休息する渡り鳥。背後で埋め立て工事が進む

 

 妻が育った街、沖縄市に暮らすようになって10年。ここは米軍のやりたい放題に耐えかねた市民が米軍車両を焼き打ちした「コザ暴動」の街だ。事件があったのは1970年12月20日。僕が神奈川で生まれてから10日後のこと。
 酒瓶の転がる雑多な風景と、基地の街としての顔、そして泡瀬干潟に代表される海辺の風景。この街にはたくさんの顔がある。それが沖縄そのもののような気がして、これまでこの土地を離れずに暮らしてきたのかもしれない。
 辺野古が注目される一方で、泡瀬干潟が静かに、だが着々と埋め立てられてきたことはほとんど知られていない。工事の主体は沖縄市。私たち市民だということになる。
 この干潟は南西諸島で最大規模で、鳥のムナグロの越冬地としても日本最大だった。その膨大な食を支えるのが干潟の泥地。海草の種類は日本最多で、500種の貝類も生息する。その一部は、潮干狩りをする人々にとって今でも大切な資源となっている。
 コロナ禍で、休日の干潟は窮屈な家から逃れてきた子ども連れでにぎわった。広大な海の上では密になることもなく、年配の方々も若い世代と会話を交わす。子どもたちは自然の風に吹かれ、成長期のエネルギーを存分に発揮して走り回る。都市のそばにある自然の重要性を再確認する日々である。


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。

いつでも元気 2021.9 No.358

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