民医連新聞

2021年10月5日

みんなで実践 職員まもるヘルスケア 全日本民医連 職員健康管理委員会 (6)早期対応が悪化防止のカギ

 長引く新型コロナウイルス感染症の影響で現場が疲弊するなか、職員のヘルスケアはますます重要です。全国でとりくまれた、職員のヘルスケアを伝える連載第6回は小規模事業所のとりくみです。

 コロナ禍以前より、職場のヘルスケアでの最重要課題は、メンタル不全への対応でした。メンタル不全による休業者への対応や予防のとりくみは、職場規模を問わず各事業所で努力がなされてきました。しかし、介護事業所など多くの小規模事業所では安全衛生活動の体制がなく、相談できる産業衛生スタッフも不在。そのため安全衛生活動は管理者任せとなっている現実があり、メンタルヘルス対応まで手が回っていない事業所が多いと推測されます。
 滋賀民医連は、病院がなく4つの診療所と介護事業所からなり、常用労働者50人以上の事業所は1老健施設のみ。医師は内科医のみで精神科医のいない県連です。常用労働者50人未満の事業所での安全衛生活動をすすめるため、県連で「職員健康委員会」を定期開催し、職場巡視も委員が相互に行っています。メンタルヘルス対策としては、管理者のハラスメント研修を制度教育に位置づけ毎年の受講を義務化。一般職員対象のハラスメント研修、メンタルヘルス研修も委員会主催で毎年開催しています。専任の産業衛生スタッフがいないため、外部EAP(従業員支援プログラム)と契約し、研修会講師の派遣や、希望者へのカウンセリングを委託しています。職場状況により、集団カウンセリングを事業所から依頼し、職場改善の方策について産業カウンセラーから助言を受けるようにしています。
 小規模事業所では、メンタル不全で一人の休業者が出ると、連鎖的に職場の負担が増し、休業者が続くという事態が起きかねません。滋賀でも経験し、現在進行形で対応にあたっています。小規模事業所ではメンタル不全の休業者が同一職場に複数出た時点で、すでに事態はかなり深刻です。職員一人ひとりの個別の問題とするのではなく、メンタル不全での休業者を出した要因が職場にあると考え、事業所管理者任せにせず、法人がかならず対応すべきと考えます。事業所から法人に報告する際にも職場状況、職員のメンタル状況の客観的な分析が必要であり、当事者からの情報だけでは正確ではない場合も考えられます。客観的職場分析のために、外部EAPを利用するのも有効でしょう。休業者が出た職場への支援、職員の補充など、早期対応が事態の悪化防止のためには重要です。(東昌子、滋賀・医師)

(民医連新聞 第1746号 2021年10月4日)

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