民医連新聞

2021年10月5日

2021 選挙に行こう 生きたい未来を選ぶ 政治に願う“わたしのひとこと”

 先の見えないコロナ禍で、私たちの生活、そして医療や介護に政治が大きく影響していることが明らかになりました。来るべき総選挙は、政権選択によって政治を大きく変えるチャンスです。全国で奮闘する仲間から、政治への願いを聞きました。

新しい時代の分岐点

大阪 中村まなび(医師)

 私の働く西淀病院では、各職場で年間目標を立てています。今年度の医局の職場目標の1つは、「選挙に行こう」です。私たちの生活や仕事は、政治のあり方や社会の動きに大きく影響されます。政治や社会の動向に関心を持ち、それに対する意思表示としての投票行動をすることです。
 私には2人の子どもがいます。子どもたちに渡したい未来は、その人が持つ個性や特徴で区別されることなく、その人がその人らしく生きられる社会。結婚しても名字を変えなくてもいい、女性らしく、男性らしく振る舞わなくてもいい。誰かに虐げられることなく、自分の能力を伸ばせる教育を受け、得意なことを生かして誰かの役に立てればいいと思います。これは、憲法で定められている基本的人権に直結することです。
 今回の選挙ではコロナ対策は避けられない重要課題です。市中の感染制御を最優先にすべきなのに、10月でワクチンの供給も止まることが決まりました。平常時の医療体制も充足することが必要です。また社会にとって絶対に必要なエッセンシャルワーカーの給与を含めた労働条件の改善と、人員育成・確保による、個々の労働時間の短縮も急務です。
 今回の選挙は新しい時代を迎える分岐点にあると思っています。私たちの世代が生きたい未来を選べば社会は変わる、政治は変えられると信じています。
 私たちの生きたい未来、新しい時代が来ると想像するとワクワクしませんか?

“いのち”あってこそ

北海道 本田雅和(介護福祉士)

 私はコロナ禍のもとで、オリンピックの強行など経済を優先し、いのちや暮らしを軽視する政治を実感しました。
 介護現場ではクラスターの脅威とたたかいながら、利用者に寄り添う介護を日々実践しています。しかし、どれだけ対策しても感染は完全には防げず、医療がひっ迫した状況では、必要な医療すら受けられずに亡くなる人が出ています。家族や職員は、その突然で理不尽な死を受け入れられず、つらい思いを抱え、離職する人も出ています。感染対策で日常業務も増えていて、終わりの見えない状況に前向きな声も聞こえなくなっています。利用者も人とのつながりを断たれ、社会的孤立のなかで苦しい思いをしています。
 コロナ禍で介護の必要性が注目されるようにはなりましたが、現場の声は政治の場に届いていません。私たちは生活をささえるのが介護の専門性だと自負していますが、サービスはどんどん削られ、介護報酬の引き上げや職員の処遇改善に政治は背を向けています。
 経済も大切ですが、まず何よりも人のいのちがあってこそ。帯広市では、署名への協力をお願いした民医連外の事業所から、これまでにない反響がありました。次の選挙では、さまざまな人と手をつなぎ、いのちや暮らしを最優先に、医療・介護が大切にされ、人が人らしく生きていける社会になればと思います。

一人ひとりの願い
政治を変え、希望ある社会へ踏み出そう

コロナでもスムーズに医療が受けられる体制を

神奈川 金田亜美(看護師)

 横浜市にある汐田(うしおだ)総合病院で、外来の看護師長をしています。新型コロナウイルス感染の第5波では、「高熱が出たが、市役所や保健所に電話をかけてもつながらない」「自宅で療養するように言われた。どうしたらいいのか」などの不安の声があいつぎました。私たちの外来にも問い合わせが多く寄せられて、ひっ迫した状態が続きました。
 自宅療養中に病状が悪化して当院の救急外来に運ばれ、入院となった感染患者もいました。症状が出たらスムーズに受診できる医療体制、お金の心配なく、安心して医療を受けられる社会を政治の責任で実現してほしいです。
 8月に行われた横浜市長選では、野党が協力して推した山中竹春さんが当選しました。私も病院で患者さんに「投票に行ってね」と声をかけました。山中さんは当選後、前市長が決めたカジノ誘致の方針を撤回したり、「ハマ弁」(市立中学校に給食として提供されている配達弁当)をやめ、完全給食を検討すると表明したりしています。「ハマ弁」は横浜市の市立中学生のあいだで「おいしくない」と不評です。子育てをしながら働いているスタッフも多いので、おいしい給食が実現したら、私としてもありがたいですね。
 私にも4人の子どもがいます。一番上は高校生で、学費の負担は重い。お金のあるなしにかかわらず、よい教育が受けられる社会にしてほしいと思います。

格差と貧困をなくし若者が希望持てる日本に

福島 須田浩之(事務)

 私は総務部で給与計算するようになって、初めて税金や保険料の大きさに気づき、その使われ方にも関心を持ちました。公的医療機関の統廃合や患者・利用者の負担増など、コロナ禍でやることなのか。政府には税金の使い方のきちんとした説明をしてほしいです。
 東京オリンピックは復興の象徴とされ、聖火リレーは福島から始まりましたが、私の身の回りでは全く話題になりませんでした。感染爆発とオリンピックが同時に流れるニュースや、その後の医療崩壊を見て、「本当にやって良かったのか」と疑問を感じざるを得ませんでした。
 入職後にあらためて被災地を訪れる機会があり、復興はまだ先だと実感しました。あれだけの事故があったのに、いまだに全国で原発が動いていることに疑問を覚えます。地元の声も聞かずに、汚染水の海洋放出が決定された時には、「国は何をしているのか」と思いました。
 これまで選挙はある種の義務感で投票をしていました。ですが、地協の学習会で医療や社会の置かれている状況、民医連の主張の根拠が理解できました。思っていた以上に政治と医療はつながっていて、低すぎる診療報酬、格差と貧困、その大本の新自由主義政策を次の選挙では、しっかりと伝えなくてはと思いが変わりました。
 少子高齢化がすすみ、社会保障も削られ、若年層での格差も深刻です。政治を動かし、若者が生き生きと、未来に希望が持てる日本になってほしいです。

対話と協調ができる 核兵器に反対する政府を

長野 有賀莉穂(看護師)

 私はコロナ禍で経済的理由での手遅れ事例を経験し、社会保障の不十分さを実感しました。また慢性的な人手不足に、コロナ禍による感染防備なども重なり、業務をこなすのに精いっぱいになりました。一人ひとりの患者に向きあう看護ができず、看護師増員や処遇改善の必要性を痛感しました。
 今年、初めて原水爆禁止世界大会に参加しました。被爆者の証言や各国代表の話を聞き、日本が核兵器禁止条約を批准していないことに疑問を覚えました。多くの人は悲惨な原爆の被害をくり返してはいけないと思っているはず。安全保障は必要ですが、日本を守り、平和のために使われるものが核である必要はないと思います。
 以前は政治に関心がなく、民医連に入って考えるようになりました。院内社保委員もしていて、委員会で事例を共有・検討するなかで、他職種の視点から社会保障を学ぶ機会になっています。上伊那医療生協では、選挙に向け職員アンケートの結果をもとに、毎週ニュースを発行しています。担当は持ち回りで、選挙でどの党・候補者を選ぶと何が変わるかわかる紙面もつくっています。
 この間の政治を見ていると、政府対国民という対立構造を感じます。対話から現場や当事者の声を聞き、国の責任や方針について納得のいく説明ができる、国民に寄り添う政治になってほしい。そして何より、被爆者や国民の声に応え、核兵器禁止条約に署名・批准する政府になってほしいと思います。

住民の声を聞き国民のために働く政治を

沖縄 瀬長宏文(事務)

 私がこの間のコロナ対策に感じるのは、国がやるべきことをやってこなかったということです。緊急事態宣言を出しても、国民に自粛を求めるだけで国の具体的対策はなにもない。感染症の基礎研究やワクチン開発を軽視した結果、供給を国外に頼らなくてはいけない現状も問題です。
 沖縄ではコロナ禍で国民の目が向かないのを良いことに、辺野古の米軍新基地建設が推しすすめられ、国会でも土地利用規制法が強行採決されました。国民生活が困窮するなかでも、辺野古の警備や海上監視には多額の税金が投入されています。本当にひどいのは裁判の結果、玉城県知事が条件付きで許可したサンゴの移植作業です。国は県の提示したサンゴ保護の条件を無視して強行。抗議した時にはすでに手遅れで、多くのサンゴが死滅の危機にあります。
 医療機関への支援も不十分で、職員の離職につながっていると感じます。さらに医師が足りないなか、医学部の定員まで減らすと言っています。医療従事者が懸命にがんばっているのに、目先の利益を優先し、国民のいのちを守ろうという意思が見えません。
 次の選挙は一人ひとりが、本当に自分たちのためにがんばってくれる人を選ばなくてはいけません。野党の政策合意に辺野古の新基地建設反対が盛り込まれたと知り、希望を感じました。国民のための正しい政治で、いのち、生活が第一の国になってほしいです。

悪循環断ち切り人が大切にされる社会へ

青森 平井佳菜(薬剤師)

 いま日本は新型コロナウイルス感染拡大により、社会全体の弱さが浮き彫りになったと感じます。政府が経済を優先したために医療が切迫し、いのちの選別を迫られる患者が増え、医療従事者の負担やストレスが増加しています。しかし、優先した経済も安定せず、仕事も生活もできない人が大勢生まれ、悪循環に陥っています。政府は憲法を守り、コロナ禍を最小限の被害で済むよう、この悪循環を断ち切ってほしいです。
 薬剤師としては医薬品の供給にも、政府にいら立ちを感じます。大手の後発医薬品メーカーの法令違反が露呈し、流通が悪化。調剤薬局でも在庫の確保・管理が大変な状況です。さらには抗がん剤アブラキサンの供給が一時停止すると発表されました。この薬は年間4万人が使用しており、患者に影響のある重大な問題です。薬剤師法第一条に「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」とあり、薬剤師として何ができるのか、今一度考えさせられます。厚労省には、製薬会社への適正指導などを通し、安全管理に努めてほしいと思います。
 薬局・薬剤師の役割を地域住民へ伝え、コロナ禍でも受診を我慢せず、医療機関に頼ることの大切さも周知したいです。一人ひとりが大切にされる社会をつくり、一刻も早く元の生活に戻れる日が来ることを願うばかりです。

誰もがその人らしく生きられる社会に

広島 高沖恵(作業療法士)

 私は昨年、二人目の子どもを出産しました。上の子は小学1年生で、新しいことを期待していたのに、コロナ禍で何もできませんでした。この子たちが成長した時、どんな影響が出るか心配です。
 数年ぶりに帰郷した孫に会いたいという高齢患者の願いを、断らざるを得ない事例もありました。政治家は医療現場や患者の気持ちを知りもせず、何をやっているのかと思います。専門家が注意喚起しても自粛や制限を守らない政治家もいて、子どもにも説明できず恥ずかしくなります。
 飲食業などでは生計が成り立たず、大量の失業者が出るのではないかと心配です。生活が成り立たなければ、健康にも影響が出るはずです。議論をしてみんなが納得する形で、生活をささえる政策をしてほしい。
 広島では「選挙に行こう実行委員会」を立ち上げ、私も初めて委員になりました。選挙に行ったことのない人に、どう関心をもってもらうか考え、アンケートや各党・候補者の考えをまとめたものがつくれないか検討しています。
 先日、難病で体が不自由な患者に、「生活のことを忙しい職員にしてもらうのは申し訳ない」と言われ、やるせない気持ちになりました。医療従事者も余裕がないと、やりたい医療ができない現実があります。子どもが子どもらしく生きられ、患者が望み、私たちがめざす医療ができる社会・政治になってほしいと思います。


行動して、投票して、政治を、社会を変えよう

2021年10月 全日本民医連会長 増田 剛

 全国の民医連職員のみなさん、過去最大となった新型コロナ第5波の中で、連日の懸命のご奮闘、たいへんお疲れ様です。
 全国の民医連各事業所は、受診しやすい環境を整え、どの地域でも発熱外来は大きな役割を果たしています。保健所機能が事実上破綻するなか、在宅に留め置かれた感染者のフォローも行い、入院できない非常事態にあたっては、酸素やデキサメサゾンの投与など、いのちを救うための行動を躊躇(ちゅうちょ)なく行っています。病棟では重症化しても転医できない患者に対して、病院の総力をあげて救命のために24時間たたかっています。ワクチン接種でも特別体制をとるなど、コロナ診療全般にわたって大奮闘しています。また介護現場でも、感染対策に注力しながら利用者の尊厳を守り、ささえるために力を尽くしています。みなさんの大奮闘を誇りに感じるとともに、心から敬意を表します。
 コロナ禍の実相はまさに災害級です。すでに1万7500人を超える貴重ないのちが失われ(9月28日現在)、くわえて4000人を超える関連自殺がある(昨年3月~今年7月)という調査結果(東京大学仲田准教授ら)も報告されています。その他コロナ禍での解雇・雇い止め11万3000人超(8月13日厚労省)、関連倒産2103件(9月28日帝国データバンク)など、国民生活への影響は甚大です。
 専門家をして「制御不能」と表現せざるを得ない現状を招いた責任が現政府にあることは明らかです。東京五輪の強行開催は国民の自粛行動への意欲を減退させる負のメッセージになり、開催前から閉幕まで貴重な医療資源を現場から奪いました。飲食店に対し必要な補償もないままに自粛を強要し、違反者を金融機関や国税庁を使って取り締まろうとしました。常軌を逸したやり方です。さらに一方的に入院ルールを変更したため、自宅で治療を受けられず、貴重ないのちが失われるという悲劇を招きました。
 医療・介護、国民のくらしは政治と密接に関連していること、為政者の姿勢と適切なメッセージの有無が国民の行動変容に大きく影響するという事実、このことが多くの国民にとって、痛苦の経験からの教訓になったと思います。
 来るべき衆議院選挙は、何よりもいのちを大事にできるかどうかの選挙となります。現在進行形のコロナ禍への対応はもちろん、待ったなしの気候危機対策や核兵器廃絶、辺野古新基地建設阻止、そしてジェンダー平等など個人の尊厳を大切にする社会づくりに向けて、この国の基本的スタンスを変えなければなりません。総選挙にあたっての民医連の要求を各職場で共有し、「選挙に、投票に行こう」から「行動して、投票して、政治を、社会を変えよう」、自分たちの未来は自ら切り開く構えで臨むことを呼びかけます。がんばりましょう。

(民医連新聞 第1746号 2021年10月4日)

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