民医連新聞

2021年10月19日

2021 選挙に行こう 私たちの声で社会は変わる いのち最優先の政治の実現を

 目前に迫った衆議院選挙(10月31日投開票)に向けて「いのち最優先の政治を実現しよう」と、全日本民医連は10月8日、「総選挙に向けた学習決起集会」を開きました。全日本民医連がつかんでいるだけで、全国450人以上が参加しました。(多田重正記者)

 主催者を代表して、全日本民医連社保運動・政策部長の藤原秀文さんがあいさつ。第2次安倍政権(2012年12月~2020年9月)は、アベノミクスの名のもとに法人税など大企業向けの減税をすすめる一方、国民には消費税を5%から10%に引き上げるなど、国民生活をさらに悪化させたことなどを指摘。コロナ禍でも「政府の無能と無策が露呈した」と話し、「私たちには、住民のいのちを守る行動が求められている」と強調しました。
 学習講演は、市民と野党の共闘を訴え活動している「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」呼びかけ人、上智大学教授の中野晃一さんが講師。「総選挙の意義と民医連への期待」と題して野党共闘の重要性などを語りました。

●アンケートの実施や動画を作成

 続く経験交流では4人が発言。広島の生協さえき歯科の岡田真司さん(事務)は、広島中央保健生協の「選挙に行こう実行委員会」のとりくみを報告。政治に対し、「私たちの声で変えられる」との希望を持ってもらうために「子どもの歯科矯正への保険適用の拡充に関する請願」が国会で採択された事例などを職員に紹介。リーフレット「2021年総選挙にあたっての全日本民医連の要求―いのちが最優先される社会への転換を」(以下「全日本民医連の要求リーフ」)を用いた学習会もひろげていることを報告しました。
 また「選挙に行こうアンケート」も職員から集め、196人が回答。66・8%が選挙に行くとこたえている一方、「いかないとこたえている人も6・1%いた」と岡田さん。「選挙に行ったという人が多くなるようにとりくんでいきたい」との決意を語りました。
 福井民医連事務局長の平澤公さんは、情勢や時代とともに入職してくる職員の考え方も変わっていることや、職場内での情勢学習も時間を確保することが困難になっていることなどにふれた上で、「どうしたら全職員に訴えられるか」検討し、県連会長をはじめ、県連内の職員の参加で「選挙に行こう」と訴える動画を作成したことを報告しました。

●民医連内外にはたらきかけて

 福岡民医連の吉田耕生さん(事務)は、民医連内はもちろん、民医連外の医療・介護事業所にもはたらきかけて声を集め、「政策要求」としてまとめた経験を発言しました。まとめた要求を確認する場としてオンライン学習会を開催したことや、候補者アンケートにとりくんでいることなども紹介。候補者アンケートの回答内容はチラシにしてひろげる予定です。
 東京民医連の朝日将さん(事務)は、「コロナで問われる東京都の役割『福祉の増進』はできたか」を発行し、同名の動画も作成、候補者からオンラインでアンケートを募った7月の東京都議選のたたかいを報告。1~3人区の22選挙区で野党が候補者を一本化。民医連出身の福手ゆう子さんも野党統一候補として奮闘し、文京区(定数2)でトップ当選。
 また衆議院議員選挙に向けてリーフレット「『政治の病』を治す」を15万枚作成。これも同名の動画を作成し法人・事業所、共同組織で活用するとのこと。
 朝日さんは「救えるいのちが救えない事態は二度と起こしてはいけない。このことを職員・共同組織と共有し、選挙のたたかいをひろげたい」と強調しました。
 行動提起は全日本民医連理事の久保田直生さん。「全日本民医連の要求リーフ」を用いた学習を職場や共同組織でひろげること、県連・法人・事業所の幹部が先頭に立って奮闘すること、宣伝物の活用などを訴えました。
 閉会あいさつは、全日本民医連副会長の柳沢深志さん。「31日の投票日まで、全国で力をあわせてがんばろう」と力を込めました。

本気の共闘をひろげ政治の大転換を

中野晃一さん 学習講演

 「10・8 総選挙に向けた学習決起集会」で、上智大学国際教養学部教授の中野晃一さんが、「総選挙の意義と民医連への期待」と題して、学習講演を行いました。
 中野さんは、「現政権のこれまでをふり返ることで、この間の自民党政治とはなんであったかを知る必要がある」として、近年の自民党政治を解説。「コロナ禍で首相が2回も代わった国を他に知らない」とし、コロナ対応に失敗し続け、国民の批判に耐えられなかった結果だと言います。「政府の対応でコロナ禍を乗り切ることはできず、医療現場や保健所の必死の対応で、何とかしのいだというのが多くの国民の実感」とも指摘しました。
 岸田首相の具体的政策はこれからとしつつも、「いまわかることだけでも、法律で国民を強制的に縛り、コロナ禍の責任が国の言うことを聞かない国民や医療機関にあるといわんばかりの、責任転嫁の姿勢は変わらない」と、新政権の姿勢を批判しました。
 自民党総裁選は、過去の人事や派閥抗争の経過も交えて「安倍・麻生VS菅・二階」という、自民党内での権力争いの延長だと解説。「多様性があるように演出しても、中身はこれまでと何も変わらない」と断じ、「岸田首相に代わり、新しいことや変化が起こるように見せても、人事を見れば安倍氏の影響力は変わらず、対米追従政策や新自由主義からの脱却などは不可能」としました。

●得意分野で共闘を

 「屈辱的だが大切なこと」として、2009年からの衆議院選挙の投票結果(表1)を示し、自民党一強政治体制がつくられてきた過程を解説。小選挙区制度のもとでの投票率低下を背景に、2012年は絶対得票率(※)では約25%でしかないのに、議席獲得数は61%という異常な状況となり、その後も悪化していることが明示されました。「大量の死票が生まれ、民意が反映されない小選挙区制度で投票率が下がった。与党は国民のために政治をしなくても、対立候補になる野党共闘を分断し、国民に政治をあきらめさせれば勝てると理解している」と説明。「それに反撃するには“野党共闘”をすすめるしかない」と訴えました。
 「小選挙区での候補者一本化を実現し、1対1の構図をつくる。具体的な選択肢を有権者に示すことで投票率が上がれば、共闘候補の勝利につながる」と力説。候補者一本化がすすんだ参議院選挙では、自民党が有利な地方1人区で、共闘候補の勝利が大きく増えた事例も示し、「衆議院でも共闘がすすめば、その効果が出ることは明らか」と言います。
 衆議院選挙に向けて、市民連合の呼びかけで4野党が結んだ基本政策合意(表2)も紹介。「政権交代で実現する政策を具体的に示すことで、共闘に向けたプラットフォームができた」とその意義を強調しました。
 最後に「サッカーのチームプレーのように、ゴールを決めるのは統一候補だが、共闘とはそれぞれの市民が自分の得意分野でボールをつなぐこと。小選挙区制度は民主主義とはとても言えない制度。しかし、具体的に政治を変えるための手段として、いまは野党共闘が必要。民医連でも積極的にひろげてほしい」と呼びかけました。(稲原真一記者)
(※)全有権者数に対する得票率

表2 野党共通政策 (9月8日に立憲民主、共産、社民、れいわが合意)

1 憲法に基づく政治の回復
・安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法などの法律の違憲部分を廃止し、コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対する。
・平和憲法の精神に基づき、総合的な安全保障の手段を追求し、アジアにおける平和の創出のためにあらゆる外交努力を行う。
・核兵器禁止条約の批准をめざし、まずは締約国会議へのオブザーバー参加に向け努力する。
・地元合意もなく、環境を破壊する沖縄辺野古での新基地建設を中止する。

2 科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化
・従来の医療費削減政策を転換し、医療・公衆衛生の整備を迅速に進める。
・医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーの待遇改善を急ぐ。
・コロナ禍による倒産、失業などの打撃を受けた人や企業を救うため、万全の財政支援を行う。

3 格差と貧困を是正する
・最低賃金の引き上げや非正規雇用・フリーランスの処遇改善により、ワーキングプアをなくす。
・誰もが人間らしい生活を送れるよう、住宅、教育、医療、保育、介護について公的支援を拡充し、子育て世代や若者への社会的投資の充実を図る。
・所得、法人、資産の税制、および社会保険料負担を見直し、消費税減税を行い、富裕層の負担を強化するなど公平な税制を実現し、また低所得層や中間層への再分配を強化する。

4 地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行
・再生可能エネルギーの拡充により、石炭火力から脱却し、原発のない脱炭素社会を追求する。
・エネルギー転換を軸としたイノベーションと地域における新たな産業を育成する。
・自然災害から命とくらしを守る政治の実現。
・農林水産業への支援を強め、食料安全保障を確保する。

5 ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現
・ジェンダー、人種、年齢、障がいなどによる差別を許さないために選択的夫婦別姓制度やLGBT平等法などを成立させるとともに、女性に対する性暴力根絶に向けた法整備を進める。
・ジェンダー平等をめざす視点から家族制度、雇用制度などに関する法律を見直すとともに、保育、教育、介護などの対人サービスへの公的支援を拡充する。
・政治をはじめとした意思決定の場における女性の過少代表を解消するため、議員間男女同数化(パリテ)を推進する。

6 権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する
・森友・加計問題、桜を見る会疑惑など、安倍、菅政権の下で起きた権力私物化の疑惑について、真相究明を行う。
・日本学術会議の会員を同会議の推薦通りに任命する。
・内閣人事局のあり方を見直し、公正な公務員人事を確立する。


中野 晃一さん
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合の呼びかけ人。上智大学国際教養学部教授


全日本民医連5つの要求総選挙に向け野党4党と懇談

 9月29日、全日本民医連の増田剛会長、岸本啓介事務局長、山本淑子次長、久保田直生常任理事が、「いのちが最優先される社会への転換を 2021年総選挙にあたっての全日本民医連の要求」を携えて政党懇談を行いました。懇談したのは市民連合の要求に応えて政策合意した、立憲民主党、日本共産党、社民党、れいわ新選組の野党4党です。
 懇談では各党に岸本事務局長が民医連の5つの要求と、この間の医療・介護現場での実情を説明しました。増田会長は「コロナ過の医療現場では、いま政治が変わらなければ、本当にいのちが守れないことを実感した。そのときに4野党の政策合意が実現し、希望を感じた。ぜひ、野党共闘で国民のための政府実現を」と呼びかけました。

「しっかり受け止めたい」

 立憲民主党は企業団体交流委員会の永田雄之さんが対応し、「自民党はこれからを語る前にまず、これまで何をしなかったかを反省すべきだ。世界的にも新自由主義からの転換やジェンダー平等の大きな流れができていて、それに逆らっているのは自公政権。要求はしっかり受け止めたい」と回答しました。
 日本共産党は倉林明子参議院議員と懇談しました。「自公政権は、コロナ禍で多数の国民が亡くなっていることに反省も謝罪もない。市民連合のおかげで政策合意がすすんで野党の連携も強まり、この間の社会保障の財源問題でも一致してきている。本気の共闘で政権交代をめざす」と応えました。
 社民党は福島瑞穂参議院議員と懇談。「いまの自民党には、国民の感覚との断絶を強く感じる。国民のいのちを軽視する姿勢には、本当に危機感をもっている。コロナ禍で介護制度も存続できるかの瀬戸際にある。次の選挙はいのちを守る選挙と思い、全力でがんばる」と応じました。
 れいわ新選組は政策担当の中田安彦さんが対応し、「消費減税や富裕層への課税は、私たちの政策と同じ方向だ。これからは教育や医療など、人への投資が必要。医療従事者の声は本当に参考になる。時宜にかなった提案なので、いっしょにがんばりましょう」と応えました。

(民医連新聞 第1747号 2021年10月18日)

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