いつでも元気

2021年10月29日

お金をかけない健康法

 介護の現場は3密が避けられないだけに、コロナ感染対策には十分な注意が必要です。利用者は認知症など基礎疾患がいくつも重なっている高齢者です。またウイルスの持ち込みは、職員か家族面会者からで、十分な警戒と注意が求められます。当院のもの忘れ外来へ通院する患者さんにも、苦労されている方が少なくありません。
 Aさん(70代後半・女性)は一緒に通院していた重度認知症の夫が、2月から特別養護老人ホームへ入所しました。ひとり住まいで寂しくなりましたが、ご自身も軽度の認知症です。買い物が難しく、物のしまい忘れなど生活に支障が出て、娘さんの支えが不可欠です。
 夫との面会は入所から2カ月後にリモート越しで実現しましたが、「私のことを分かってもらえず寂しかった」と言います。さらに2カ月後、「今度は手を振ってくれたので嬉しかった」と一喜一憂です。
 Bさん(80代後半・女性)は、軽費老人ホームに入所8年目です。毎月娘さんに連れられて外来通院し、抗認知症薬を続けています。以前は娘さんが頻繁に面会し、月1回の診察には、必ず同行されていました。しかしコロナ禍で外出が一切禁止され、家族の面会も制限。7年続いているもの忘れ外来の受診は、電話再診・家族代理受診とせざるを得なくなりました。
 Bさんは長年、実に克明な日記をつけており、そのためもあってか認知症は軽度のままで経過していましたが、コロナ禍になってから認知力が低下気味のようです。
 高齢者施設などにおける面会のあり方については、厚労省からも詳細な留意事項が示されています。
 例えば、面会者とその同居家族が発熱、のどの痛み、咳、倦怠感、下痢、嗅覚・味覚障害などの症状を有する場合は面会を断ることになっています。さらに人数は最小限とし、面会時間を通じてのマスク着用や、できるだけ居室以外の換気可能な別室で面会することなどが条件とされています。
 厳しく切ないですが、確かに安心ですね。


大場敏明
おおば・としあき
1946年、新潟県生まれ。千葉大学医学部卒、内科医。船橋二和病院、東葛病院、みさと協立病院などを経て、クリニックふれあい早稲田(埼玉県三郷市)院長。著書に『ともに歩む認知症医療とケア』(現代書林)、『ドクター大場の未病対策Q&A』(幻冬舎)、『かかりつけ医による「もの忘れ外来」のすすめ』(現代書林)

いつでも元気 2021.11 No.360

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