いつでも元気

2021年10月29日

認知症でも安心して暮らせる街に

迷子になった女性に声をかける四中圏域ねっとわーくのメンバーと民生委員。YouTubeから

迷子になった女性に声をかける四中圏域ねっとわーくのメンバーと民生委員。YouTubeから

 茨城県水戸市の介護事業所などが外出中に迷子になった認知症高齢者の見守り動画を作成しYouTubeで公開している。
 コロナ禍で住民参加型の見守り訓練ができないなか動画でより多くの人に知ってもらおうと制作した。
 中心になったのは民医連の「ケアハウスみと」内にある水戸市南部第一高齢者支援センター。
 活動の様子は全日本民医連学術運動交流集会で発表される。

全日本民医連学術運動交流集会
 10月22~23日、オンライン開催。見守り動画は23日の第11分科会(まちづくり・共同組織)で「地域で見守り声かけ訓練 動画作成プロジェクト」と題して発表

 動画の冒頭に登場するのは、交通量の多い車道の脇を歩きながら道を横断しようとする高齢の女性。通りがかった男性2人が優しく声をかけると、女性は10km以上も離れた自宅から「娘のところへ行こうと思って」と答える。名前を聞いても分からない様子だ。
 男性は「一緒に探しましょう」と同行しながら、水戸市南部第一高齢者支援センター(地域包括支援センター)に連絡。職員が駆けつけて女性は無事に保護される。
 動画を制作したのは、水戸市内の介護事業所、障がい事業所で構成する「四中圏域ねっとわーく」。ねっとわーくは市立第四中学校区にある40事業所の連絡組織で、南部第一高齢者支援センターが事務局を担当する。
 6分37秒の動画は昨年10月から撮影を始め、今年3月に完成。高齢者施設の職員や地元の民生委員が役者やカメラマンを務めた。撮影機材は自前で、シナリオや画像編集も全て職員の手作りだ。

コロナ禍で訓練が中止に

 認知症やその疑いで行方不明になった高齢者は、昨年1万7565人にのぼり過去最多を更新。認知症になっても、安心して暮らすためには地域住民の見守りがカギを握る。
 ねっとわーくは2016年から、年2回ずつ「地域で見守り声かけ訓練」(徘徊模擬訓練)を開催。認知症高齢者に扮した職員が街中を歩き、歩行者やお店の店員、利用者に実際に声をかけてもらう住民参加型の訓練だ。
 南部第一高齢者支援センター長の吉田克也さんは「地域住民がお互いに声をかけ合うことができる、安心して外出できる街を目指して訓練を重ねてきました」と振り返る。
 コンビニや飲食店、ガソリンスタンド、金融機関、学校などで実施してきたが、コロナ禍で昨年度に予定していた訓練は全て中止に。今後の取り組みを協議するなかで、動画作成を思いついた。
 ねっとわーくは有志を募り「動画プロジェクトチーム」を結成。少人数で頻繁に連絡をとりながら制作を進めた。吉田さんは「ねっとわーくの定例会議は月1回のうえ大所帯のため、なかなか動きが取りづらい。プロジェクトチームをつくることで、動画制作もスムーズに進みました」と言う。
 広く地域住民に視聴してもらうため、広報にも知恵を絞った。新聞社など6社に情報提供、そのうち2社の取材を受け、企画段階から撮影の様子、完成後の試写会まで記事にしてもらった。

7つのポイントを紹介

 動画は「声かけをする時は1人で」「後ろから声をかけない」など7つの見守りポイントを紹介。介護施設の職員が「勇気をもって声をかけたことによって、1人の命が救われることもある」と呼びかける。
 YouTubeにアップすると、「動画になると分かりやすい」「声をかける時の気を付けるポイントが参考になった」「知人が出演していて親しみやすい」など、住民にも好評だった。
 吉田さんは動画制作の成果として(1)プロジェクトチームを立ち上げたことで、ねっとわーくのメンバーが主体的に活動するようになった(2)コロナ禍でも地域活動ができた(3)企画段階から地域住民が参加した(4)ねっとわーくの圏域限定だった活動が幅広い人に届いた、の4点をあげる。
 「コロナ禍でも工夫しながら活動できたことが良かった」と吉田さん。今年もプロジェクトを立ち上げ、2本目の動画作成と見守り訓練実施計画について協議している。「今後は居場所作りプロジェクトも立ち上げる予定で、ねっとわーくの新しい地域活動が始まっています」と話していた。

動画のQRコード

動画のQRコード

動画のURL
https://youtu.be/7_QOU7DweVc

いつでも元気 2021.11 No.360

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