いつでも元気

2021年11月30日

まちのチカラ 
湖上の温泉 梨の花薫るまち

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

望湖楼の湖上露天風呂では東郷湖の風景に浸かることができる

 鳥取県のほぼ中央に位置する湯梨浜町。
 湖底から湧き出る珍しい温泉や、「黒いダイヤ」と呼ばれる巨大シジミが魅力です。
 ノルディック・ウオーキングで人気の東郷湖の湖畔には、新しいアウトドア型宿泊施設もオープン。
 水辺の景色に恵まれた風光明媚なまちを巡りました。

感染対策をしたうえで取材しています

 鳥取砂丘コナン空港から車で約40分、日本海に面した湯梨浜町に到着しました。町にはその昔、天女が舞い降りたという羽衣伝説が残る東郷湖(汽水湖)があり、山陰八景の1つに数えられています。全国的にも珍しく湖底から温泉が湧いており、はわい温泉と東郷温泉の2つの温泉場があります。
 西岸のはわい温泉に向かうと、湖上にまるで竜宮城のような豪華な露天風呂が。「東郷湖の水辺の風景を、窓越しではなく直に楽しみながら湯に浸かってください」と、望湖楼の中島伸之社長が案内してくれました。
 宿と湖を結ぶ朱色の橋を渡り、開放的な湖の景色が広がる露天風呂へ。時にはボラが跳ねる水音に耳を傾け、朝霧や夕陽に輝く幻想的な景色を愛でながらの湯浴みは、ここでしかできない贅沢です。

汽水湖:海水と淡水が入り混じる湖沼

「黒いダイヤ」ヤマトシジミ

 東郷湖の名物は大粒のヤマトシジミ。一般に流通しているシジミは貝の厚みが8~10mm程度ですが、東郷湖のシジミは14mm以上で、大きいもので25mmを超えるものも。大きいだけでなく味も評判が高く、黒く輝くその姿から「黒いダイヤ」と呼ばれ、高値で取引されます。
 これほど大きなシジミが育つのには3つの理由が。1つは湖水がシジミの生育に適した塩分濃度であること。2つ目に湖底から湧き出た温泉により、シジミの餌となるプランクトンが豊富なこと。そして3つ目に、東郷湖漁協を中心に漁獲量、大きさの制限、漁場などを組織的に管理しているからと言われています。
 居酒屋笑酒繁じょうの店主、松本力さんは朝7時から東郷湖でシジミ漁を行い、夜の居酒屋営業では器に山盛りのシジミのバター炒めや、シジミ味噌ラーメンなどを提供しています。お酒を飲んだ後にサービスするシジミ汁は絶品! 疲れた体に旨味成分がしみ渡ります。
 朝から晩まで働くバイタリティーの源を尋ねると、「毎朝シジミ汁を飲んでいるからね」と大きな声で笑います。店は地元住民で賑わい、店主の人柄と料理で笑顔が絶えません。

梨の名産地

 町は鳥取県を代表する梨二十世紀や、新甘泉、新興など様々な品種が採れる梨の産地です。町内にあるJA鳥取中央東郷梨選果場には1日に約200tの梨が持ち込まれ、“東洋一のマンモス選果場”と言われています。
 町南端の、県道29号線近くにある観光農園波関園では、海外でも高品質の果物として喜ばれる梨を畑でもぎ取る体験ができます。食べたい梨を自分で選んだら、プラスチック製のナイフでカットしてその場でいただきます。もぎたては誰もが驚くフレッシュな味わい。収穫は8月~11月頃までですが、春には山々を真っ白に染める梨の花が見所です。

ウオーキング・リゾート

 町には全国で初めて「全日本ノルディック・ウォーク連盟」の公認コースに選ばれた東郷湖周コースがあり、定期的に大会も開かれています。ノルディック・ウオークとは、北欧フィンランドで始まった2本のポールを使ったウオーキングで、全身を使ったエクササイズとして注目されています。
 町内には「梨の花の薫る道」「滝めぐりの道」など7つのコースと、ポールの貸し出しや給水、休憩などのサービスが受けられる7つの「ウオーキングステーション」が整備されています。
 インストラクターが常駐しているウオーキングカフェCafe ippoでは、本格的な計測器で体組成を測ったり、高たんぱく&低カロリーの食事メニューも提供。「町全体でウオーキングに力を入れており、健康のために定期的に来店される住民の方も多いんですよ」と店長の藤平実喜さん。
 さっそくポールを借りて歩き出すと、心地良い風景とともに全身がポカポカ温まってきます。車では通り過ぎてしまう、歩いてこそ出会える景色。ウオーキングから得られる心身の充足を、ぜひ現地で味わってください。

一度は泊まってみたい

 今年10月、東郷湖の湖畔に全く新しいスタイルの宿泊施設とカフェが誕生しました。創業約60年の割烹旅館をリニューアルし、湖屋(KOYA)としてオープン。湖を望む絶好のロケーションに、アウトドアの世界的メーカー・スノーピーク製のモバイルハウス「住箱-JYUBAKO-」が4棟あり、宿泊してバーベキューを楽しんだりカフェでくつろぐことができます。
 「コロナ禍の前から旅館経営の転換を進めていました。自分だけの空間で、雨でも晴れでも素晴らしい東郷湖の景色、そして天然温泉でリフレッシュしてほしい」と若女将の牧田貴子さん。
 冬は湖面から温泉の湯気が立つという唯一無二の風情にひたれることも。慌ただしい日常を離れて、ゆったりとした水辺の景色と一つになってみるのも良いかもしれません。
 町は日本海に面し、旧羽合町のハワイ海水浴場と宇野地区のうの海水浴場という2つのビーチが。どちらも白く輝く砂浜と透き通る紺碧の海が広がる素晴らしいロケーションで、夏には多くの海水浴客で賑わいます。
 町名のとおり湖底から湧き出るお湯、県特産の梨、海岸に広がる白い砂浜と、特色ある風光明媚なまちは五感を大いに刺激してくれます。

■次回は青森県西目屋村です。

まちのデータ

人口
1万6639人(10月1日現在)
おすすめの特産品
二十世紀梨、シジミ、養殖ヒラメ
とまり漬
アクセス
鳥取空港(鳥取砂丘コナン空港)から
車で約40分、大阪からJR智頭急行で約3時間
問い合わせ先
湯梨浜町観光協会
0858-35-4052

いつでも元気 2021.12 No.361

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