声明・見解

2021年11月30日

【要請書2021.11.29】国籍や在留資格の有無に関わらず、すべての人への医療保障を求める要請書

2021年11月29日

内閣総理大臣 岸田 文雄 様
厚生労働大臣 後藤 茂之 様
法務大臣 古川 禎久 様

全日本民主医療機関連合会
会 長 増田 剛

 本年3月、名古屋出入国在留管理局の施設に収容されていた外国人女性が、医療がまともに提供されないまま亡くなりました。
 外国人の医療における問題は、入管内で生じる問題に留まるものではありません。入管の外でも外国人の医療を受ける権利が保障されていません。特に難民申請中に仮放免となった外国人は、健康保険や生活保護などあらゆる社会保障制度から除外されている上、就労が禁止されています。そのため、仮放免中に体調を崩し、医療が必要となった場合、必然的に支払いが困難となります。治療費が払えないため、適切な医療を受けることができず、命を落としかねない危険に常に晒されています。
 さらに、日本の難民認定率は、わずか0.4%(2019年)です。これは、諸外国(カナダ55.7%、米国29.6%、ドイツ25.9%、フランス18.5%等)と比較して著しく低く、日本の難民認定審査のあり方について、国連から再三懸念が表明されています。
 難民条約第24条では、「自国民に与える待遇と同一の待遇を与える」とされています。これにより、難民認定された外国人は、健康保険や生活保護をはじめとしたあらゆる社会権が適用され、医療においても保障されることとなります。このことを踏まえれば、難民認定率0.4%といった日本の異常な難民政策が、非正規滞在者を不当に作り出し、その結果、社会権がまともに保障されない外国人を大量に生み出していると言えます。
 また、難民申請中以外の在留資格を喪失した外国人についても、病気になっても医療にかかることが出来ないなど、同様の問題を抱えています。
 全日本民医連で把握している範囲でも、外国人医療における公的支援制度は、関東圏域などの特定地域にとどまっており、その支援内容も限定的(例:入院14日まで、外来3日までなど)です。そのため、外国人医療には、無料低額診療事業を適用して診療を行うケースが多く、外国人医療が医療機関の経営を圧迫しているとの声と合わせて公的支援を求める声が多数寄せられています。

 世界人権宣言や国際人権規約において、社会保障の権利は、全ての人に備わった権利として宣言・規定されていることを踏まえれば、国籍や在留資格を問わず、日本にいる全ての人に社会権(とりわけ生存権)が保障されなければならず、国はこれを保障する義務があります。
 外国人の医療を公的に保障する制度の確立を求め、以下、要請します。

要請事項

  1. 国籍や在留資格の有無に関わらず、日本にいる全ての人への医療を国の責任で保障すること。
  2. 当面の措置として以下の対応を早急に実施すること。
    1)医療を必要とする仮放免者が、仮放免中に医療が受けられるよう、健康保険に加入できる在留資格を出すこと。在留資格が出せない場合であっても、治療を必要とする場合は「被収容者処遇規則」30条の適用対象を拡大し、入管庁がその医療費を負担すること。
    2)外国人未払医療費補填事業を全国の医療機関が利用できるよう、国庫負担の制度として実施すること。また、当該事業の適用対象、期間、金額など、医療機関の負担にならないよう、全面的に拡充すること。
    3)国立病院・自治体病院を含む公的病院も外国人未払医療費補填事業の対象とすること
    4)無料低額診療事業を行う医療機関が、無保険者を受け入れたときは、医療費の健康保険負担相当分(7割)を補填する仕組みを作ること。
  3. 国連勧告を受け入れ、難民認定審査のあり方について全面的に見直し、難民申請者側に難民であることを証明させるやり方は直ちに中止し、調査・審査機関を独立させた上で、適切な調査並びに人道的な見地に立った審査が行われるよう、改善すること。

以上

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