いつでも元気

2021年12月29日

青の森 緑の海

2018年 北中城村

 新しい年を迎え、心も新たにする1月。「雪も降らず、四季がない」とよく言われる沖縄も、春に向けて準備が始まっている。
 旧暦8月(新暦9月頃)に網を張り、種付けをしたアーサは、ひと月ほどすると新芽が出てくる。
 アーサは「ヒトエグサ」という緑藻の仲間で、全国で流通しているアオサやアオノリとは親戚にあたる。沖縄では汁物や天ぷらの具としてポピュラーだ。時期になると海岸の岩場などに付着して大きくなるため、僕たち一般の住民でも指で摘むことができる。
 北中城村には、沖縄県内で最大のアーサの畑が広がる。畑といっても、肥料をやったり耕したりすることはなく、自然の絶妙な干満の力を借りて育てていく。
 養殖をしている漁師さんに聞くと、アーサは海であればどんなところにでも生えてくるが、たくさん収穫するには干潟が必須とのこと。
 日照時間や、水面上に出ている時間など、いろいろな条件がうまく合致する必要もあり、どの干潟でもきれいなアーサを育てられるわけではないという。
 1月から3月にかけて、村の海岸線は緑のアーサ色に染まる。その色を見ると、僕と息子は用意してきた網袋を手に、いそいそとしゃがみ込む。
 栄養満点のアーサを自分で直接摘んで帰ることは、自然そのものをからだに取り込むこと。沖縄は海に囲まれた島であり、海に生かされている、そう実感する季節の色である。


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。

いつでも元気 2022.1 No.362

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