民医連新聞

2022年1月18日

診察室から 診療所の楽しさ

 昨年4月から、診療所の所長になりました。長年病院で循環器・カテーテル治療などを中心に担ってきた者が、新たな医療環境に身を置いたわけです。
 高血圧、糖尿病などが多いのはもちろん、意外と多い訴えは不眠症や頻尿。不眠症の訴えを聞いていると、不安症がもとになっていることが多いようです。人間関係、仕事などの嫌な記憶や明日の生活の不安が、眠れない頭の中を駆け巡ります。薬は最小限にして、その日にあった「良いこと探し」をして床につく訓練を勧めます。どういう訳か、神様は眠れない時には悪いことしか思い出さないように人間をつくってしまったようです。さらに社会は、弱いものが住みにくくなりました。「良いこと探し」をする習慣をつけて眠りに入ることは、良き睡眠を得る手助けになります。
 頻尿の患者には、詳しく病歴を聞きます。必要な時は排尿前後の膀胱(ぼうこう)容積をエコーで測定し、膀胱の大きさや残尿を測定します。内科の基礎疾患と関連している時や、軽症の神経因性膀胱の時には診療所で治療をがんばります。重症者や前立腺肥大が重度の時は、泌尿科へ紹介します。
 現在70件余りの訪問診療を行っています。ここで感動したのが民医連内外とのチーム医療。重症患者や看取りの患者は、民医連外の訪問看護師やケアマネジャーとの連携なくして診療は難しい。両下肢の著明な浮腫とびらん、浸出液が湧き出てくる高齢認知症で暴言を吐く一人暮らしの患者。入室も拒むなど問題山積で、前医が訪問診療を「ギブアップ」したために、地域のケアマネジャーから依頼がありました。ポータブルエコーで見ると下大静脈フィルターがほぼ閉塞。少量の利尿剤と栄養改善、訪問看護師へ依頼しての毎日のびらんの処置、当院看護師とたびたび往診をくり返して足はすっかり完治。民医連を超えたチームの連携に皆が喜びました。診療所は、次々に課題をくれる楽しい場所です。これからも毎日、課題山積!(松本久、熊本・くわみず病院附属くすのきクリニック)

(民医連新聞 第1752号 2022年1月17日)

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