民医連新聞

2003年12月1日

再生にむけ着実な一歩 病院機能評価受審した 京都民医連中央病院

 京都民医連中央病院の事件※発覚から一年が経ちました。地域をはじめ様ざまな人たちにささえられ「再生」をめざす努力がつづいています。今 年七月には「患者様の権利章典」や「病院方針」を定め、九月には日本医療機能評価機構の「病院機能評価」も受審。同院を取材しました。(木下直子記者)

 事件後、外部調査委員会や行政の調査を受け、管理運営、検査、医師のあり方という三つの問題が指摘されました。 それぞれについて改善計画も作成し、「医療」「管理」「経営」「信頼」の四点で再生の道をさぐっています。いつも考え方の真ん中に置くのは「患者中心」と いうこと。

 「患者さんの信用を裏切った、ということが重大な問題でした」と、吉中丈志院長。「新たに定めた『患者様の権利章典』(左)に基づき、その視点から、病院側に何が抜けていたのか? と問うつもりで改善をすすめています」。

 またこの『権利章典』と同時に『病院の基本方針』も発表。「安心安全の医療/患者様本位の医療/地域に開かれた医療」の三つを推進するために、どう活動するかを書き込みました。

 九月から倫理委員会もスタートさせました。メンバー一二人中六人が外部委員。共同組織、新聞記者、医療事故被害 者、大学教授、弁護士という顔ぶれです。院内の問題事例・病院の対応をたえず外部の目で検証されることになりました。議事録はネット上で公開し、誰でもみ ることができます。

「欠けていたこと」議論して…医局

 医師集団は改善を求められた部署の一つです。京都民医連内の医師すべてに呼びかけた医師集会はじめ、何度も話し合いの場をもちました。

 「事件の発生は検査室だが、他職種から医師に自由に意見が言えない雰囲気があったのでは」「職種間の風通しが悪かったことが一つの要因」「感染症に対する認識不足が根底にあったのでは」と、医師の側の反省の議論に。

 また「自分たちに問われているのは職業倫理・医療倫理の問題ではないか?」という数人の医師の指摘で、倫理問題を学習しました。これには研修医が活躍しました。

 経営問題の打開策を話し合っていた時に、共同組織からまず出た声は「職員からあいさつがない」ということでした。「あいさつさえできず、患者さんに充分な対応ができるわけがない。医局が先頭に立とう」と、医師の約七割が参加し、外部講師から接遇教育を受けました。

 「診療科がたくさんあって、医療機器もある。自分たちは何でもできている、と思いこんでいたが、今回の事件で『実際はそんなにできてへん』とわかってきたんだと思うんです」と、医局長の山田恵二郎医師は語ります。

 感染症にもっと強くなろう、と原因究明委員会委員であった京大・一山教授のもとに二月から医師を研修に出しています。

外部評価を受けて

 九月に病院機能評価を受審。受審は事件発覚前から決まっていたことでしたが、「客観的に改善の結果が認められる機会。信頼を回復するんだ」と臨みました。毎週足を運び医療整備を助けてくれた埼玉はじめ、全国の仲間の力も借りました。

 審査の巡回が終わり、審査員から最後にかけられた言葉は「がんばりましたね」。久びさのほめ言葉に思わず涙する職員もいました。

始まったばかりです

 機能評価受審のとりくみで、院内のコミュニケーションの悪さを痛感する場面が何度もありました。これを一つひとつ改善しながら受審に備えました。

 新しい施設展開も許可が下りず、政治的な圧力も随所にかかり、経営の厳しさは続きます。医療の質の確保に向けた再生の努力は始まったばかりです。

 「僕らの医局では『変わろう』という気持ちになっています」と、山田医師。吉中院長は「患者さんや行政担当者か らも、中央病院は変わりましたねという声が寄せられています。倫理委員会の委員の方がたも、患者さんの人権を中心にすえた医療の実践を、民医連に求めてい ると思いました。期待に応えて努力したい」と決意を語りました。

※「細菌検査室虚偽報告事件」…京都民医連中央病院の細菌検査室が尿や喀痰からの嫌気性菌の細菌培養検査と喀痰のマイコプラズマ検査を行っていないにもかかわらず、検査技師の判断で「検出せず」と虚偽報告を行っていた。


 

京都民医連中央病院 患者様の権利章典

2003年7月1日

 私たちは、患者様とご一緒に、力をあわせて、これらの権利をまもり発展させていくことを誓います。

1・良質の医療を受ける権利

 患者様には、差別されることなく適切で質の高い医療を受ける権利があります。

2・選択の自由の権利

 患者様には、担当の医師・病院を自由に選択し、また変更する権利があります。

 患者様には、いかなる治療段階においても他の医師の意見を求める権利があります。

3・自己決定の権利

 患者様には、自分自身に関わる自由な決定を行うための自己決定権があります。 

 患者様には、自己決定のために必要な情報を得る権利があります。

4・情報を知る権利

 患者様には、診療録に記載されている自己の情報を知る権利があります。

 患者様には、病院・医療・福祉に関する情報を知る権利があります。

5・プライバシー保護の権利

 患者様には、プライバシーが保護される権利があります。

6・健康教育を受ける権利

 患者様には、健康教育を受ける権利があります。

7・尊厳を得る権利

 患者様には、人間としての尊厳が守られる権利があります。

8・宗教的支援を受ける権利

 患者様には、宗教的支援を受ける権利があります。

9・苦情を言う権利

 患者様には、病院に対して意見や苦情を表明する権利があります。

10・医療をともに進める権利

 患者様には、医療をともに進めていただく権利があります。

 


 

新たに設けた制度

内部連絡制度】問題があると考えた時に、職員が直接、院長に意見を言えるルート。専用のメールアドレスを開設し、随時受けつける

職員意見箱】職員間で相互に意見を出すもの。事務長が管理し、「医療と病院を良くする会」に公開。なお、同会は共同組織・患者会・職員で構成。院所利用委員会のような役割をもつ

提案制度】自治体のとりくみをヒントに、業務改善の提案を報償つきで募集

(民医連新聞 第1321号 2003年12月1日)

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