いつでも元気

2022年1月31日

けんこう教室 
コロナ禍のメンタルケア

愛媛生協病院 今村 高暢

愛媛生協病院
今村 高暢

 新型コロナの感染拡大から2年が経過しました。コロナ禍の影響は社会全般に及び、メンタルヘルス(心の健康)への影響も心配されています。
 厚生労働省は2020年9月に「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査」をインターネットで行いました(資料1)。感染拡大が始まった直後から4つの時期(2~3月、4~5月、6~7月、8~9月)に区分して、それぞれの時期における心の状態を調べています。
 それによると、何らかの不安を感じた人の割合は4~5月で63・9%に達し、最も低かった8~9月でも45・0%でした。
 不安の対象は「自分や家族の感染」が6割以上と最も高く、「自粛等による生活の変化」などが続きました。30~40代の男性や20~40代の女性、「宿泊業・飲食サービス業」「生活関連サービス業・娯楽業」の人は「自分・家族の仕事や収入」に関する不安の割合が高く出ました。
 困ったこと・ストレスに感じたことについては、「自分や家族が感染するかもしれない」(75・5%)、「医療用品・衛生用品が入手困難なこと」(57・6%)、「旅行やレジャーができないこと」(50・4%)、「家族・親戚・友人などに会えないこと」(47・9%)などが多く挙げられました。

女性の自殺が増加

 コロナ禍が私たちの社会や生活に与えた影響を示すデータが公表されています。
 警察庁の統計に基づく厚生労働省の発表によると、20年の自殺者は2万1081人。前年より912人(4・5%)増え、11年ぶりの増加でした。女性の自殺が顕著に増えるとともに、小中高校生の自殺は過去最多となりました。コロナ禍のもとでの労働環境や家庭環境の変化が、自殺を増加させた可能性も指摘されています。
 筑波大学の久野譜也教授らの調査(20年11月)では、60歳以上の27%にコロナ前よりも認知機能の低下が見られました。
 また時事通信の調査(20年4~11月)では、介護保険の要介護度の区分変更申請が急増していました。コロナ禍の外出自粛などによって、高齢者の介護度の重度化が起こっていることを示唆するものです。

コロナ禍の心への影響

 コロナ禍がもたらした心への影響として、東北大学の富田博秋教授は次の5点を挙げています。
(1)この感染症は、心の健康を保つうえで重要な安心・安全を脅かし、感染や将来への不安・恐怖を強いる
(2)生活のリズムを保つこと、人と交流することは心の健康を保つうえで重要であるが、この感染症の拡大を防ぐために、従来の活動・リズム・交流は大きく妨げられる
(3)この感染症は、生活・経済状況に大きな負担や損害をもたらすが、そのことは心に大きな負の影響をもたらす
(4)目標を立てて物事に取り組むことが重要であるが、この感染症がもたらす影響がいつまで続くのか、今後、どうなっていくのか、見通しや展望を立てにくい
(5)(特に医療従事者は)結果的にこのウイルスに感染することや、限られた資源や体制のなかで感染症の診療や対策に従事することは、自責感や罪悪感をもたらしやすい

基本的な身体のケアを

 このような慢性的なストレスが続く状況に、どのように対処したら良いのでしょうか。いくつかアドバイスをしていきます。
 まずは基本的な身体のケアができていないと、精神的な健康も保てません。
 しっかり定期的に食事を摂り、水分も十分に摂りましょう。タンパク質・糖質・脂肪などといった栄養バランスも大事です。疲労時にカフェイン入り飲料を飲みすぎると、動悸や不安が強くなることがあるので注意が必要です。
 さらに十分な睡眠時間の確保と、質の良い睡眠を心がけます。その際、腹式呼吸などの呼吸法を取り入れ、飲酒量を減らすことも有用です。
 適度な運動を習慣にしましょう。ウオーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動は、心身の安定に有効です。
 またストレスに対処するうえで、自分自身をよく知ることも大事です。ストレスを感じたら、自分の気分や体調、行動はどう変化するのかを考えてみましょう。例えば資料2に挙げた「ストレスチェックシート」などで、自分自身の心の状態をチェックするのも役に立ちます。

みんなで声をかけあって

 家族や大切な人と直接会って話す機会は減っていると思いますが、こまめに連絡を取ってつながりましょう。電話で人と話すだけでも不安が軽くなり、気分をリフレッシュできます。メールやLINE、SNSなどの手段もあります。
 地域に困っている人がいたら、声をかけてください。本人は心の不調に気づかないことも多いものです。服装が乱れてきたり、表情が暗くなったり、不満やトラブルが増えるなど、心の不調は行動面にもあらわれます。
 必要なときに他の人を支えることは、支える側にもプラスになります。コロナ禍に皆で取り組んだ教訓は、今後のまちづくりにも生かせるものと思います。
 テレビやインターネットには、コロナに関する情報があふれています。過度に刺激的な情報や心配をあおるものもあります。情報収集は最小限にして、あまり神経質になりすぎないようにしましょう。
 最後に、明けない夜はありません、コロナ禍はいつかは終わります。大事なことは今の大変さを忘れずに、コロナ後に生かしていくことです。

日常生活の変化

 本文で紹介した結果のほか、日常生活の変化として、約4割(39.1%)の人が「運動量は減少した」とする一方、ゲームをする時間は18.6%が「増加した」と回答。不安・ストレスの解消方法として、「手洗いやマスク着用などの予防行動」(73.5%)のほか、「スマートフォンやインターネットを使って情報を検索」(35.7%)、「家族や友人に話をする」(21.0%)、「運動などで身体を動かす」(20.3%)などが続いた。


コロナの後遺症もリスクに

 コロナ感染時の症状の有無に関わらず、後遺症としてさまざまな症状がみられる場合があります。
 症状としては嗅覚異常、倦怠感、味覚異常、発熱・微熱、呼吸困難感などが挙げられます。まだ未解明な部分が多く、原因やどのくらいの人が後遺症に悩んでいるのかも分かっていません。
 後遺症が長引けば生活の質の低下につながり、不安や抑うつ、睡眠障害の傾向が強まるとも言われます。コロナの後遺症もメンタルヘルスに影響を与えるリスクになります。


ピア・サポートを力に

 ピア・サポートとは、共に困難な状況を抱え、不安や恐れを共有するピア(仲間)として、気遣い合うことです。
 職場であれば、職員同士もしくは管理者と職員の間で、心配事を言葉にしたり質問ができる場を設けます。
 この間、民医連の職場でも、それぞれの思いを共有する「グチ飛ばし大会」「シェアリング会」などの実践が報告されています。
 仲間同士で支え合うためにも、普段から対等な関係で豊かな対話ができる集団作りに努めたいものです。

いつでも元気 2022.2 No.363

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