いつでも元気

2022年2月28日

青の森 緑の海

2021年12月 鹿児島県奄美市

 このところ毎月、奄美大島へ通っている。だいたい1週間から10日の滞在期間中は、ほとんどが夜の撮影だ。昨年7月、世界自然遺産に登録された島の生物多様性は、夜にその真骨頂を見せる。
 ケナガネズミ、トゲネズミ、アマミノクロウサギ、そして森を彩る何種類ものカエルたち。闇の中で彼らは実に生き生きと暮らしている。オットンガエル、イシカワガエル、ハナサキガエルと、森の主役たちは季節に合わせて繁殖し、うまく住み分けをしている。
 カエルたちが繁殖をする場所では、ヒメハブやガラスヒバァなどのヘビも集まり、昼には想像もつかないにぎわいを見せる。写真はアマミアカガエル。大きなメスの背中にオスが乗り、いままさに世代をつなぐ準備のさなかだ。
 驚いたのが彼らの繁殖地。11月から2月頃の夜に産卵のため森の外縁部へ集まってくるが、例えば畑の農道や工事現場の水たまりなど、そこは時に人間生活と重なる場所でもある。
 このカップルがいた場所も、舗装道路の上の小さな水たまりだった。人間が森を開いて造った林道で沢は分断されたが、水はそれでも止まることなく海をめざす。アスファルトの上のわずかな水辺で続けられる営みを、見てもらいたいと思う。


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。

いつでも元気 2022.3 No.364

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