民医連新聞

2022年4月5日

みんなで実践 職員まもるヘルスケア 全日本民医連 職員健康管理委員会 (9)感染後も配慮を

 長引く新型コロナウイルス感染症の影響で現場が疲弊するいま、職員のヘルスケアはとりわけ重要です。全国での実践を伝える連載第9回は、後遺症状についてです。

 新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい始めて、2年以上が経過しました。医療・介護施設でのクラスター発生も続いており、民医連事業所でも罹(り)患(かん)した職員が多くいます。
 新型コロナウイルス感染症は、感染性が消失しても持続する「罹患後症状」が高頻度にみられます。国立国際医療研究センターの調査によれば、感染症状である嗅覚・味覚障害、倦怠(けんたい)感、呼吸苦、咳嗽(がいそう)は、診断後6カ月には7・7~2・4%、12カ月後には3・1~0・4%と経時的に減少しています。ところが回復後に出現する記銘力障害、集中力低下、うつなどの症状は6カ月後も約10%、12カ月後にも約5%に残存しており、感染症状よりも高頻度です。社会生活に大きな影響があることが推測され、職場での配慮が必要です。
 厚生労働省は2021年12月、「新型コロナウイルス感染症診断の手引き」の別冊として、「罹患後症状のマネジメント(暫定版)」を発行し、罹患後の症状への対応と職場復帰支援へのアプローチを呼びかけています。このなかで産業医学的アプローチとして、「事業者が疾病を抱える労働者を職場復帰させると判断した場合は、業務により疾病が増悪しないよう、一定の仕事に対する配慮(就業上の措置)や治療に対する配慮を行うことは、労働者の健康確保対策などとして重要である」とのべています。
 また「医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となること」とされており、2022年2月末現在、医療業で9476人、社会福祉・介護業で4909人が労災認定されています。罹患後症状に関しても、「症状が持続し(罹患後症状があり)、療養等が必要と認められる場合も労災保険給付の対象」と明記され、精神障害を発症した場合も労災の対象となります。これらの制度も活用して、十分な療養を行える職場環境を整えることが重要です。
 長引く新型コロナ対応で、多くの職場で疲労感がまん延してきています。しかし、「罹患後症状」に苦しむ職員に対して、「気のせい」などの心ない対応を取ることがないよう、知識の共有と職員間の共感を強めることが重要です。(田村昭彦、福岡・医師)

(民医連新聞 第1757号 2022年4月4日)

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