民医連新聞

2022年4月19日

第45期運動方針を学ぼう すべての職員参加で育ち合う職場づくり

 第45期運動方針を学ぼう――。コロナ禍のいまこそ、「いのちの平等」の立場で、民医連運動を実践する職員集団を育てることは重要です。そこで、シリーズ第1回は各地の職員育成の実践を紹介します。(稲原真一記者)

「人権cafe」学習運動から継続した学び発展

大阪・淀川勤労者厚生協会

 昨年5月に始まった、「人権cafe」学習運動。同法人では、これを学習運動発展の機会にしようと議論、独自の獲得目標として、「人権のアンテナ感度を高める職場づくり」を設定しました。同法人専務の内田寛さんは、「人権を学ぶだけでなく、日常の活動に結びつく学習運動にしたかった」と明かします。
 既存の教育委員会とは別に推進委員会をつくり、若手の参加も積極的に促しました。副専務の村岡さんは「法人合同で事業所の幅がひろがり、横断的な職員参加をめざした」と言います。

■学びで生まれる思い

 推進委員会では、さまざまな講師を招いて、幅広いテーマの学習会を計5回開催しました。学習会はすべてZoomを利用したオンライン形式で、参加者は毎回100人前後。講演内容は録画し、法人のホームページから職員限定で視聴できるようにしています。
 あわせて各職場ではタブレット版で毎月届く、「人権cafe」の読み合わせもすすめました。ある職場では、職員が子どもの人権に関して「校則でツーブロックを禁止している理由を、学校に問い合わせた。子どもの納得いく説明をしてほしいと訴えた」と発言し、盛り上がりました。
 西淀病院の食養科では、「淀川勤労者厚生協会70年の歩み」という、法人の70年史の読み合わせを始めました。科長の大西哲也さんは、「学習活動の根本にある、民医連綱領や法人の成り立ちを学ぶ必要があると思った」と言います。読みあわせは朝礼にあわせて、毎日10~15分程度。「民医連新聞」『いつでも元気』なども活用して、学びを深めています。
 「入職当初はこんなに長く勤めるつもりはなかった」と冗談交じりに話す大西さん。入職してすぐに経験した阪神・淡路大震災が、民医連運動への確信になったと言います。「全国から集まる仲間と、支援に奮闘する先輩の姿に、すごい組織だと思った」とふり返ります。自分と同じように、若手職員が民医連運動に確信を持てるきっかけを、少しでもつくれればと学習を続けています。「民医連の存続には、10年後、20年後の運動をささえる職員を育てる必要がある。栄養士や調理師の仕事だけではない、大きな視点で活動できる職員になってほしい」と語ります。
 有志が元全日本民医連会長の故莇(あざみ)昭三さんの遺稿集「莇昭三からきみへ」の輪読会を始めるなど、学習運動が終わった後に学習を継続している事例も。一部では、45期運動方針の読み合わせを、自主的に始めている職場もあり、徐々に学習が定着してきています。

■思いに寄り添う職場づくり

 コロナ禍での課題も見えてきました。オンラインの学習会では受動的な学びが中心で、体験や討論で学習を深めにくいことが課題です。「学習を位置づけてとりくめなかった」という、一部の現場からの率直な意見も上がってきました。内田さんは「職責者がどれだけ学習を位置づけられるか。ただ読み合わせるだけでなく、民医連的視点で深める投げかけができた職場は成功している」と指摘します。取り残される職場や事業所がないよう、法人としての援助のあり方も検討中です。
 「ロシアのウクライナ侵攻で複雑な思いを持った職員も多いはず。一人ひとりの思いに寄り添い、憲法を守る綱領を掲げている意味を伝えていきたい」と内田さん。「地域や身近なところでも、人権や憲法にかかわる問題は多い。学びのフィールドは用意できる」と、今後の展望を語ります。

マンネリ化を抜け出し新たな教育体制の確立を

山梨民医連

 山梨民医連では、コロナ禍で職員育成の課題が浮き彫りになりました。対面での企画、学習が行えなくなった2020年度は、制度研修が完全に停止。山梨民医連会長の平田理さんはこれを問題視しました。「会長スタッフ会議で議論し、常任理事会で問題提起した。関係者への聞き取りで、県連教育委員会が機能不全に陥っているとわかった」と言います。
 医薬分業をきっかけに、法人から県連へ委員会の機能を移すなかで、医科法人の山梨勤医協には、教育委員会が実質的になくなりました。職員育成の責任の所在があいまいになり、制度研修の内容も長年見直しがされずマンネリ化。19年以降は、県連教育委員会の委員長や事務局長が不在のまま放置されていました。

■集団的議論で課題共有

 そこで21年6月から、「山梨民医連教育活動推進プロジェクト会議」を立ち上げ、現状認識と教育制度再建に向けての協議を開始しました。同会議のメンバーで県連副会長の榊原啓太さんは、「当時、全日本民医連で協議中だった職員育成指針2021年版(案)を学習し、議論の土台にした」と言います。その後、一次答申を提起し、すべての理事にアンケート提出を求めたところ、予想以上に多くの意見が集まりました。県連事務局次長の今井拓さんは、「意見の多さに、多くの理事が危機感を持っていると感じた」とふり返ります。
 一次答申に対しては、「不十分な総括ではまたくり返す」などの意見もあり、原因について厳しく討議しました。8月にはそれらをまとめ、最終答申を提出。大きな問題として、①県連教育委員会、特に委員長が教育活動推進にこだわる指導性を発揮できなかった、②理事会での職員育成の位置づけが甘く、教育制度に関して十分な議論を行わず問題を放置した、という2点を確認しました。

■幹部先頭に前進

 一方で、福祉法人のやまなし勤労者福祉会は、独自の教育制度をつくり前進しています。同法人は事業拡大に伴い、2012年に経営や管理運営の第三者評価を受審。業務部長の雨宮千里さんは、「経営責任の所在があいまいで、内部統治(ガバナンス)が存在しないなど、厳しい指摘を受けた」と言います。最大の課題として職員育成、とりわけ管理者教育があげられ、改善に乗り出しました。
 職員育成では、1983年の山梨勤医協の倒産という苦い経験から学んだ「民主的管理運営」を重視。「ひとりで決めない、みんなで議論して試行錯誤する」を徹底しました。副主任以上のすべての職責者を対象に、外部講師を招いて経営やマネジメントを学習しました。グループワークなど集団的な学習を増やし、目標や課題を共有、なんでも言える職場づくりをめざしました。15年には法人の教育委員会を立ち上げ、民医連の理念教育も組み込んだ職員の生涯教育やキャリアラダー(※)を作成し、毎年アップデート。いまでは主体的に考え、動ける職員が増えて、社保、反核平和活動への疑問も自ら学び、深めています。
 こうした成功例から、「幹部職員や職責者の構えと姿勢が、決定的に重要」と平田さん。「業務時間内の学習機会の保障を徹底し、社保や平和の問題も後回しにしない。職員からの疑問に真正面から答えていることが、若手の成長につながっている」と指摘します。
 現在、教育委員会の選出と再建、教育活動推進指針の現場への浸透などが課題です。医科法人、薬局法人の幹部が外部研修を受けるなど、成功例から学んだ教訓を共有、実践できる教育委員会をめざし、動き始めています。
※ラダー(はしご)を上るように、キャリアアップを積める教育制度


「職員育成指針2021年版」を民医連の隅々にまで息づかせよう

全日本民医連職員育成部部長 川上 和美

 45期運動方針では「職員育成指針2021年版」を活用し、「人権の尊重」と「共同のいとなみ」を大切にする組織文化の発展をめざす、職員育成にとりくむことを掲げています。「民医連運動にとってその基盤となる職員育成は、職能としての成長、民医連職員としての成長、市民社会の一員としての成長が地続きでつながっている。(中略)職員育成は民医連の運動そのもの、たたかいそのものである」。45回総会での山本一視前育成部長のこの発言からも、全日本民医連の方針への結集と、方針を誠実に学び実践していく重要性を感じます。
 「職員育成指針2021年版」では、すべての県連・法人・事業所で、民医連運動の基盤となる職員育成活動の位置づけを高めること、すべての年代の職員が「人権の尊重」と「共同のいとなみ」の学びと実践から、成長できる組織文化の醸成・発展を目標にすること、医療・介護の専門職、民医連の職員、そして市民・主権者として育ちあい、「高い倫理観と変革の視点」を養う職員育成活動、多職種協働での成長、青年とともに育ちあう視点の重要性などを強調しています。
 貧困と格差のひろがり、ロシアのウクライナ侵攻でたくさんのいのちが奪われる状況に心を痛めるなか、軍拡や核共有、改憲の動きに恐怖と憤りを感じます。いのちを脅かす社会のあり方を決して許さず、いのちとくらしを奪う戦争に断固反対し、憲法を守るためにも、いのちを守る専門職として、多くの声をあげていくことが重要です。一人ひとりが「いのちの平等」「人権」を基本に据え、目の前の矛盾や現状を語りあい、学びあうこと。事例や実践から生まれる「なぜ」を問い、原因の原因を追究して問題の本質をとらえ、行動すること。誰もがその人らしく生きる権利、個人の尊厳を守るケアの担い手として「共同のいとなみ」を核心に据えた実践を通し、学び続けることが大切です。
 私たちは「民医連は憲法を守り、綱領の実践とともに未来社会につながる組織である」と、諸先輩から学んできました。70年余りの歴史で築いてきた民医連の本質と価値を受け継ぎ、時代を切りひらくのは私たちです。職員の成長こそ民医連運動発展の力となります。民医連の未来は、いのち、憲法、民医連綱領の視点を持つ若い力と、先輩たちの経験知が合わさってつくられていきます。
 「職員育成指針2021年版」を民医連の隅々まで息づかせましょう。そして職員一人ひとりが夢と希望を持ち、いのち輝く未来を切りひらく、高い倫理観と変革の視点を鍛える育成活動を、全国で大いにとりくみましょう。

(民医連新聞 第1758号 2022年4月18日)

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