副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2022年5月6日

副作用モニター情報〈572〉 新規睡眠薬による副作用

 2010年以降に発売された新規作用機序の睡眠薬として、メラトニン受容体作動薬のロゼレム(一般名:ラメルテオン)、オレキシン受容体拮抗(きっこう)薬のベルソムラ(一般名:スボレキサント)、デエビゴ(一般名:レンボレキサント)があります。
 それまで主流であったベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、GABA受容体に作用して脳の興奮を抑えることで睡眠を促すのに対して、これらの薬剤は睡眠のリズムを整えることで不眠を改善するため、依存性がなく、安全性が高いと考えられています。
 しかしながら、使用量の増加にともない、当モニターにもこれらの薬剤に関連する報告が散見されるようになってきました。約半年間に寄せられた報告は以下の通りです。

ロゼレム錠 浮動性めまい1件、傾眠1件
ベルソムラ錠 ふらつき2件、幻視1件、悪夢2件
デエビゴ錠 眠気1件、吐き気(悪心)2件、悪夢2件

* * *

 ラメルテオンは、睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンが作用する受容体に働き、メラトニンと同じように刺激して、自然な睡眠状態を促します。生体内におけるメラトニンは、光と年齢に大きく影響されるため、日中はしっかりと光を浴び、夜は光を避けることも大切です。
 スボレキサントは、オレキシン受容体に働き、覚醒物質であるオレキシンをブロックすることで睡眠作用をもたらします。悪夢の副作用が他の睡眠薬と比べて多いのは、ノンレム睡眠だけでなく、レム睡眠も増加させ、夢を見ることが増えるためとされています。
 レンボレキサントの作用機序はベルソムラと同様ですが、半減期が50時間超と非常に長く、持ち越し効果が生じやすいため、用量設定には注意が必要です。
 ベンゾジアゼピン系薬剤の過量処方や長期処方による弊害が問題視されているなか、これらの睡眠薬には一定の有用性があると思われます。しかし、医師や薬剤師をはじめとする医療スタッフが、それぞれの特徴や副作用をしっかり把握した上で処方および服薬指導などを行うことが、安全な薬物治療においては欠かせないと考えます。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

(民医連新聞 第1759号 2022年5月2日)

副作用モニター情報履歴一覧

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ