民医連新聞

2022年5月24日

憲法カフェ ぷち④ 緊急事態条項と白紙委任状

 弁護士は、依頼者から委任状を預かることがあります。委任状には、売買など特定の権限を与える旨が記載されます。しかし、ときに委任事項欄が未記入の委任状(白紙委任状と言います)が渡されることもあります。当然、白紙委任状は好き勝手に記入されるおそれがあるので、信用できない人に渡してはいけません。
 ところで、自民党改憲4項目にある緊急事態条項は、政府が「緊急」と判断した際に、国会の権限である立法権を一部行使できるに等しい内容です。このような条項を認めることは国民が政府に白紙委任状を渡すのと同じです。「緊急の場合には仕方ないのでは?」と思うかもしれません。しかし、その「緊急」かどうかも国会ではなく政府が判断します。その判断に関しては事後的に国会の承認を得ることとされていますが、承認が得られなかった場合にどうなるかは書かれていません。これでは政府に無制限な権限を与えるのと変わりません。それに、「緊急」の場合には、国会議員の任期を延長できるともされていますから、不正をされても選挙で正すことすらできません。
 緊急事態条項という白紙委任状を渡すことは、選挙を通じた国民主権や三権分立という憲法の骨格を破壊するのと同じなのです。(明日の自由を守る若手弁護士の会)

★「若手弁護士の会」に、憲法について聞いてみたい疑問・質問を募集中。編集部まで。

(民医連新聞 第1760号 2022年5月23日)

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