いつでも元気

2022年5月31日

青の森 緑の海

2022年1月 西表島

 ウクライナ侵攻で、沖縄では米軍基地内の動きが激しくなっている。じわじわと戦争の恐怖が肌にしみこむ感覚がある。
 昨年から撮影を続けてきた西表島の仕事が無事終わった。年間を通じてさまざまな生命の営みを見てきたなかでも、イリオモテボタルは特に印象深い。近年になって新種に記載され、今のところ西表島、石垣島、小浜島でしか確認されていないホタルだ。
 写真のホタルは羽を持たないメス。昼間は石垣の奥に隠れており、暗くなると外に出てくる。そしてゆっくりとお尻を上に掲げ、かすかな灯りをともす。
 メスは日が暮れた後のたった1時間ほどしか光らない。また周囲が少しでも明るくなると灯りを消し、お尻を下ろしてしまう。光でオスを呼ぶメスは、明るくなった集落では生きていけないのだ。
 他の場所に大きく移動することなく、非常に狭い範囲で代々生きてきたイリオモテボタル。彼らの静かな生きざまを見ていると、戦争ばかりしている人間がなんともガサツな生きものに見えてくる。
 今回撮影した映像は、夏ごろリニューアルオープンする予定の「西表野生生物保護センター」の展示に使われる。島に来た際には、ぜひ深い自然の息遣いを感じていただけたらと思う。


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。

いつでも元気 2022.6 No.367

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ