民医連新聞

2022年6月21日

相談室日誌 連載520 気づき受け止める想像力 高齢夫婦を早期に支援(富山)

 Aさんは80代の女性。70代の夫とエレベーターのない公営住宅の4階に住んでいます。夫とは20年ほど前に結婚し、他に支援する親族はいません。要介護3で、糖尿病、パーキンソン病、認知症があります。
 別法人の担当ケアマネジャーが退職するため当事業所に依頼がきました。Aさん宅を訪問すると、自宅は尿臭が立ち込め、床に衣類や物が散乱しており、日常的に介護が必要な状態でした。夫も徐々に活気が落ち、自宅での介護は限界と感じているものの、Aさんが施設入所を拒否しているので支援がすすまなかった、という引き継ぎでした。
 訪問看護師より、利用料が残高不足で引き落としができず、夫がお金の不安を口にしていたとの情報がありました。夫に話を聞くと「年金が入る月でも、月末には生活がきつくなる」と言います。2人の年金は合わせて月額24万円。しかし、年金が入ると同時に前々月から滞納していた住宅費、公共料金、介護サービス費などの支払いや車のローンなどで、月末にはほとんど手元に残りません。
 具体的な手立てとして、まず障害者手帳を申請することにより、医療費の自己負担を免除することができました。また、行政書士と財産管理委任契約を結び、契約代行や金銭管理を依頼しました。
 介護施設入所は費用面で難しいため、指定難病の適用で医療療養病床での入院を相談しました。また入院に必要な物品は事業所職員で持ち寄り支援し、手続きにも同行しました。結局、Aさんは支援開始から1カ月半で入院することができ、夫への支援については地域包括支援センターに引き継ぎました。
 今回、短期間で支援することが可能だったのは、職員の気づきから経済的問題を明らかにし、支援の方向性を早期に決めてすすめたからだと思います。
 自ら声をあげることができない利用者や家族は、相談しても何も変わらないと思っていることもあります。だからこそ、「こんなことで困っているのでは」という想像力を働かせ、それを発信すること、そしてすぐに行動することが大事だと思います。

(民医連新聞 第1762号 2022年6月20日)

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