民医連新聞

2022年7月5日

気候危機のリアル ~迫り来るいのち、人権の危機~ 新連載 (1)人間活動が気候危機の原因 文:気候ネットワーク

 気候変動はすでに世界中で大きな影響と被害をもたらし、「将来世代のために対策が必要」という意識から、「人類が直面している極めて深刻な危機」という認識に変わりました。私たちが持続可能な脱炭素社会を実現することは可能なのでしょうか。今回から1年間、気候変動に関する科学的動向、世界の動向や国内の気候変動対策の状況・提言などを伝えていきます。
 現在、地上付近の世界の平均気温は産業革命前と比べると約1.1℃上昇しています。このような急激な気温上昇は気候を変化させ、危機的な状況を引き起こします。例えば、熱中症などの健康被害が増大しています。海水が温度上昇に伴って膨張、陸地の氷が解けて海に流れ込むことで海面が上昇しています。水蒸気が増加し大雨や集中豪雨が増え、洪水が多発しています。生態系が変化し、動植物の絶滅なども起こっています。干ばつも増え、農業が続けられない地域も増えています。住み慣れている土地を奪われて移動せざるを得ない気候難民を生み出し、貧困や経済格差拡大にも影響しています。気候の危機は環境の問題にとどまらず、人権や平和を脅かす危機となっているのです。
 気候変動に関する科学的な警告を発してきている「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」が、2021年8月に第6次評価報告書第1作業部会報告書を発表し、「人間活動の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」とのべました。産業革命以降の急激な気温上昇は、私たち人類が大量の化石燃料を消費し、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを大量に排出してきたことが原因だと明確になってきました。
 IPCCの最新の報告では、産業革命前と比べて2100年ごろまでに、世界の平均気温は低い場合でも約1.4℃、高い場合では約4.4℃上昇すると予想されています()。気温上昇を1.4℃程度に抑えるためには、世界全体での急速な温室効果ガスの排出削減が必要です。もし4℃以上の上昇が起これば、多くの動植物や生態系、人類にとって極めて深刻な事態になります。2015年の「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」で採択されたパリ協定では、気温の上昇が2℃を十分に下回る、さらに1.5℃に抑えるという目標になっていますが、最近では2℃の上昇でも被害や損失が大きくなると予想されていることから、1.5℃以下に抑えるという目標に変わってきています。(田浦健朗)


気候ネットワーク

 1998年に設立された環境NGO・NPO。
 ホームページ(https://www.kikonet.org

(民医連新聞 第1763号 2022年7月4日)

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