民医連新聞

2022年7月5日

我慢の限界超え救急搬送最多 2021年経済的事由による手遅れ死亡事例調査

 全日本民医連は6月20日、記者会見で「2021年経済的事由による手遅れ死亡事例調査」を発表しました。(長野典右記者)

 調査期間は21年1月1日~12月31日で、22都道府県連から45事例の報告がありました。男女比は男性80%、女性20%で、年齢層は60代が38%で60~70代で65%を占めました。現役世代の40~50代で26%になりました。世帯構成は独居が26件で58%。65歳未満(18件)の雇用形態では、非正規雇用は39%、無職も39%で、8割になりました。負債のある人は、23件で51%、滞納している税(公共料金)では保険料がもっとも多く17件(図1)。無保険・資格証明書を合わせて16件(36%)をしめました。一方で、正規の保険証、および短期保険証が23件(51%)ありました(図2)。保険証を所持していても、窓口負担などが理由で受診できない実態がうかがえます。救急搬送が18件ともっとも多く、我慢の限界を超えて搬送される事例がほとんどでした。

■周知されてない無低診

 医療費の窓口一部負担金減免制度の国保法44条の適用事例は2件にとどまりました。無料低額診療事業(無低診)を知って受診した事例は11件で、地域の医療機関や役所、議員、地域包括支援センターから紹介された事例もありましたが、多くは受診後の医療費相談で無低診の利用につながり、当該事業が住民に十分に周知されていない課題もあります(図3)。

■主な死因はがん

 主な死亡原因はがんで31件(69%)を占めました。無職や非正規雇用で健康診断を受けていないこと、受診時にはすでに全身状態が悪く、手術できないなど治療が困難で対処治療となった事例が目立ちました。また、がんの診断を受けても、経済的な理由で受診しない事例もありました。
 コロナ禍の影響を受けて手遅れ死亡となった事例は5件(11%)で、コロナ禍で事業収入または就労収入を減らし、経済的に困窮して治療の中断や受診控えで重篤化、死亡に至ったものです。
 今回の調査から、非正規雇用、自営業など経済的不安定層にコロナ禍が追い打ちをかけ、いっそう困窮に陥っていることがうかがえます。保険証がないことや、経済的困窮が医療へのアクセスを阻害し、重症化や手遅れを招いています。年金受給者は低い年金だけでは生活がなりたたず、非正規雇用の就労収入を失い、受診控え・手遅れとなっています。

■無保険や窓口負担なくす

 調査のまとめとして、生活困窮者の無保険は、医療をあきらめさせ、セーフティーネットから切り離してしまうため、無保険者を生まない抜本的な対策が必要と訴えました。また、受診の我慢や手遅れにつながる、窓口負担をなくすこと、受診抑制を深刻化させる75歳以上の医療費窓口負担2割化の中止、生活保護行政での「水際作戦」をやめて申請手続きを簡略化して、誰もが利用できる制度にすること、国保の国庫負担を元にもどし、高すぎる国保料を改善することなどを求めました。

(民医連新聞 第1763号 2022年7月4日)

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