いつでも元気

2022年7月29日

ハーフタイム

増田剛(全日本民医連会長)

防衛費5兆円 暮らしに使えば

 困ったことに、防衛予算を現在の倍、つまりは11兆円にするという案が出ています。現在世界第9位の防衛(軍事)予算が、11兆円なら3位になります。
 増額の根拠は、ウクライナ情勢や北朝鮮の動向、そして台湾有事も想定して、日本の防衛力を抜本的に強化すべしということなのでしょう。でも、それが本当に良い方法でしょうか? 
 想像しましょう。○○海峡の緊張が遂に限界を越え、同盟国Aと対立するB国の間で戦争が始まってしまったら…。A国の戦闘機は日本国内に沢山ある基地から発進するので、B国のミサイルは当然日本に向かって飛んできます。
 多くのミサイルの撃ち合いで、美しい日本の風景はあっという間に変貌し、何万という国民が殺されます。運が悪ければ50基以上ある原発(廃炉決定済も含む)のどれかが破壊され、大量の放射能がばらまかれます。多くの国民はその後、数十年間住む場所を失うことになるでしょう。
 こんな想定は現実離れでしょうか? 私はそうは思いません。紛争の平和的解決への努力を行わなくなった時、一体何が起きるのか、歴史が証明しています。
 絶対に戦争を起こしてはいけないのです。どんなに軍事力を強化しても、無傷で終わる戦争などありません。国土が小さく、そこに1億を超える国民が密集しているこの国を、軍事力で守るという発想そのものが間違っていると私は思います。
 「私たちから攻め込むことは決してしません」「万が一のための最低限の自衛力しか持ちません」「ですから、お互いに攻め込まないという約束をしましょう」─。
 こうした平和外交を徹底することでしか、日本の安全は守れないと思います。この考え方は既に国連憲章に記されており、あの大戦の教訓から国際社会が到達した決め事なのです。
 南西諸島に自衛隊を配備し、9条改憲を目論むなど、今の政府のやり方では、かえって近隣国との緊張が高まり、戦争勃発の危険につながるのでは? 
 6月3日の東京新聞1面に「防衛費5兆円 暮らしに使えば…」との記事が載りました。現在約5・4兆円の防衛費を倍にするなら、あと5兆円以上が必要です。その5兆円があれば、約1・8兆円で大学授業料無償化が実現、4・8兆円で年金受給者(4051万人)に年12万円増額、5・2兆円で公的保険医療の自己負担をゼロにできるというのです。
 逆に今の社会保障費から5兆円が奪われたら…。年金が12万円減額、現役世代の医療費窓口負担が3割から6割に! そんなこと絶対に許してはいけないのです。

いつでも元気 2022.8 No.369

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